分子がらせん状に積み重なったナノチューブの中を電子がらせん状に伝わることを、自然科学研究機構・分子科学研究所の研究者が初めて確かめた。らせん状ナノチューブが、ナノレベルのコイルに成りうることを実証した成果として注目される。
ナノチューブは、飯島澄男・名城大教授が発見したカーボンナノチューブが有名。これがシートを巻いたような円筒形であるのに対し、今回の研究対象になったのは、分子がらせん状に並んだヘキサベンゾコロネンと呼ばれるナノチューブ。福島孝典・理化学研究所機能性ソフトマテリアル研究チーム・チームリーダーと相田卓三・東京大学教授らによって開発された。
分子科学研究所の中村敏和・准教授らは、磁気共鳴法という測定手法を用いて、このヘキサベンゾコロネンナノチューブの中を、電子がらせん状に積層した分子に沿って流れていくことを確かめた。これは、ナノスケールの電磁石ができ、逆にこのナノコイルに磁石を近づければ、ナノ空間に電流を起こすことが可能であることを示した成果と言える。
コイルは、電磁石や非接触ICカードなどさまざまなところで使われていることから、研究者たちは、ナノサイズの分子コイルの可能性が確かめられたことで、今後これまでと違った概念の分子デバイスや分子メモリーの開発などが期待できる、と言っている。