児玉龍彦・東京大学アイソトープ総合センター長(先端科学技術研究センター 教授)は30日、日本記者クラブで記者会見し、放射線防護に関する政府や原子力安全委員会の対応を厳しく批判し、どの地域がどの程度危険か正確かつ分かりやすく説明し、年間被ばく線量が1ミリシーベルト以上の区域に住む住民が希望したら移住を政府、東電が支援すべきだと語った。
1ミリシーベルト以下にするまで帰還しないことにしないと、本当の復興ができない、としており、特に学校、幼稚園、保育園、住宅の除染が重要と主張した。除染については、放射性物質を隔離して減衰を待つより方法はないことも強調し、住民と自治体職員中心で取り組む緊急除染と、専門家、企業が主体となる恒久除染に分けて対応することが必要だとしている。住民が主体となって行うために「自分の家と地域がどうなっているか」「どのような技術がありどう除染するか」という情報を政府が提供することが不可欠とも語った。
福島第一原子力発電所事故によって放出された放射性セシウムの量は広島・原爆に比べ168倍という数字とともに、原子力発電所から放出される放射性物質の放射能が減衰しにくく、被ばくの影響が長期間続くことも指摘した。原爆の場合、1年後に残る放射性物質は千分の1に減るのに対し、原発は10分の1にしかならない、という。
内部被ばくが遺伝子を傷つけて10-30年後にがんを引き起こす危険性があることから子どもと妊婦に対する対策が重要だとしており、国際放射線防護委員会(ICRP)には、21世紀になって明らかになってきた遺伝子(DNA)に対する放射線の影響についてよく知る研究者が少ないことも指摘した。
児玉氏は福島第一原発事故の後、被災地である南相馬市で幼稚園や小学校の放射線量を定期的に測定し、実際に緊急の除染作業にも関わっている。除染作業によって年間予想被ばく線量が確実に減った事例も紹介した。