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最大クラスの津波も対象にした防災対策提言

2011.06.27

 中央防災会議の「東北地方太平洋沖地震を教訓とした地震・津波対策に関する専門調査会」は26日、津波対策について従来の考え方を根本的に改める必要があるとする中間報告を公表した。

 中間報告は、従来の防災対策を「海岸保全施設などに過度に依存していた」としている。その理由として、過去発生したことが指摘されていても地震動や津波を再現できなかった地震は、地震発生の確度が低いとみなし想定の対象外にしていたことを挙げた。今後の対策は、「考えうる可能性を考慮し、被害が大きくなる可能性についても十分に視野に入れて想定地震・津波を検討する必要がある」としている。

 具体的には、これまで対象にしていた「頻度の高い津波」に加えて、東北地方太平洋沖地震のような想定対象外にしていた「最大クラス」も併せた2段階の津波対策を提言した。「最大クラス」の津波が襲来しても「行政機能、病院などの最低限必要十分な社会経済機能を維持することが必要。このため、住民の避難を軸に、土地利用、避難施設、防災施設などを組み合わせて、ソフト・ハードの取り得る手段を尽くした総合的な津波対策の確立が必要だ」としている。できるだけ被害が拡大しないよう特に住民や行政の防災教育、防災訓練などを通じて防災意識の向上に努める重要性を強調している。

 「頻度の高い津波」対策では、海岸保全施設の設計対象よりも高い津波が来襲しても施設の効果が粘り強く発揮できるような技術開発の必要を指摘した。

 さらに今後、検討する必要があることとして「避難対策が確実に実施できるよう、津波避難ビルの指定、避難路の整備」「すばやい避難行動をとることができるようリスクコミュニケーションの構築」「地震・津波災害に関する国民の理解を向上させる総合的な教育プログラムの開発」などを挙げた。

 また、「数千年オーダーでの大規模津波の発生を確認するためには、津波堆積物調査や海岸段丘などの地質調査、生物化石の調査など、地震学だけでなく地質学、考古学、歴史学も含めた統合的研究の充実が重要」「今回の巨大津波の発生原因と考えられる海溝付近の状態を正確に把握するために、陸上だけでなく、海底において直接地殻変動を観測し、プレートの固着状態を調査するなど、地震学に基づく想定地震・津波の精度向上の研究推進を一層努める必要がある」など、調査研究面でも大きな課題があることを指摘している。

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