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読解力回復 数学、科学上位維持 PISA結果で判明

2010.12.08

 国際的に見劣るとされていた15歳生徒の読解力が3年前より向上し、9年前のレベルに回復していることが7日、経済協力開発機構(OECD)が公表した国際学習到達度調査(PISA)結果から明らかになった。

 PISAは、OECD加盟国と調査実施基準を満たす参加希望国・地域を対象に2000年から3年おきに実施されている。文章を理解、利用、熟考する能力を問う読解力、数学的根拠に基づいて判断できる能力を問う数学リテラシー、科学的知識を使用し、証拠に基づく結論を導き出す能力を問う科学リテラシーの3分野について15歳を対象に抽出試験を行う。

 各回3つの試験のうち1つが重点分野とされ、今回は読解力が他の2分野に比べ倍の試験問題が受験者に課された。前回、読解力が重点分野だったのは2000年で、この年との比較が最も重視される。

 今回の調査は09年に実施された。日本の15歳生徒の読解力平均得点は統計的有意差を考慮すると上海、韓国、フィンランド、香港より下だが、シンガポール、カナダ、ニュージーランド、オーストラリア、オランダとほぼ同じで、上位4カ国・地域の次に位置していた。3年前06年の調査結果では韓国、フィンランド、香港、カナダ、ニュージーランド、アイルランド、オーストラリア、リヒテンシュタイン、ポーランド9カ国・地域より下位とされ、グリアOECD事務総長から「文章情報を取得し、処理し、統合し、評価することが最大の課題」と評された(2007年12月7日ハイライト・アンヘル・グリア氏・経済協力開発機構(OECD) 事務総長「教育の質と公平性の向上目指し」参照)。

 今回の調査結果は3年前に比べ、明らかに読解力の向上を示しているが、今回と同様、読解力が重要分野とされた2000年の調査結果に比べると「統計的有意差はない」とOECDは言っている。2000年の調査では「1位のフィンランドとは統計的に有意差が認められるが、上位2位グループに位置する」という結果だったので、このレベルに回復したと言える。

 数学リテラシーの平均得点は上海、シンガポール、香港、韓国、台北、フィンランドに次ぐグループで、科学リテラシーは上海、香港、フィンランドにつぐグループに入っている。いずれも前回、重点分野だった調査年(数学は03年、理科は06年)に比べ、調査結果に「統計的有意差はない」とされた。

 数学リテラシーは03、06年とも高いレベルを維持していると評価されている。科学リテラシーについては「科学的知識を再現し、科学的証拠を解釈することにより結論を導く能力は高い」と評価される一方、「科学的に探ることができる問題を認識し、科学的探求に必要な要素を見つけ出すのは苦手」とOECDから指摘されていた(前述、ハイライト・グリア事務総長「教育の質と公平性の向上目指し」参照)。

 数学、科学リテラシーとも明確な経年比較は、それぞれが重点分野となる次の調査結果(数学2012年、科学2015年)を見ないと分からない、とOECDは言っている。

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