日本原子力研究開発機構は17日、高速増殖原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)で炉内中継装置が引き抜き作業中に炉内に落下し、引き抜けなくなった理由について、「上部案内管と下部案内管の接続部の張出しによる」と発表した。同機構のホームページによると、今後の対応については「接続部の張出し量と炉内中継装置の外径、燃料出入孔スリーブ外径などを考慮して、炉内中継装置を燃料出入孔スリーブと一体で引抜くという方針とし、それに向け詳細な検討を進めていく」としている。
この発表文だけ読んで実態を十分理解できる人はほとんどいないと思われるので、以下は新聞報道から現状と見通しを紹介する。
「もんじゅ」の地元である福井新聞のウェブサイト「福井新聞オンライン」によると、「今後、数カ月かけ新たな回収器具をつくり、原子炉容器上ぶたの穴の外側にある『スリーブ』と一体で引き抜く方針。大がかりな作業が必要なため、次段階の40%出力試験は大幅遅れの可能性が指摘されているが、原子力機構の辻倉米蔵敦賀本部長は記者会見で『2011年度内の開始は可能』との見通しを示した」という。
さらに「上ぶたの構造物の撤去など大がかりな作業となるため、経済産業省原子力安全・保安院による審査が必要となる可能性もある」と伝えている。
朝日新聞の18日朝刊記事は「機構は当初、出力を40%に上げて発電能力などを検証する第2段階の性能試験を来夏にも計画していたが、『2011年度中』と修正した。第3段階となる出力100%の運転は13年春に始める目標だが、手間取ればさらにずれ込む可能性が出てきた」と書いている。
炉内中継装置というのは、燃料交換時に燃料交換装置と燃料出入装置の間で燃料構成装置を引き渡すための装置。事故は8月26日午後、燃料交換作業を終えた後の片付け作業中に起きた。原子炉機器輸送ケーシングを使い炉内中継装置の頂部をつかんでつり上げる作業中、約2メートルつり上げたところで突然、炉内中継装置本体が原子炉容器内に落下した。
10月1日に日本原子力研究開発機構が発表した中間報告によると、原子炉機器輸送ケーシングのつかみ装置の爪を開くための開閉ロッドが正しい位置から約90度回転しており、つかみ装置のつめにずれ痕が確認されたことなどからから、つめが正常に開かず、炉内中継装置の頂部に十分に引っかからなかったことが落下の原因、とされている。