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セメントの成分から透明な金属創出

2007.04.12

 電気を通さない典型的な物質とみなされてきたセメントの成分から、電気を通し、かつ透明な金属を創り出すことに、東京工業大学、大阪府立大学、理化学研究所、高輝度光科学研究センターの研究チームが成功した。

 この物質は、石灰とアルミナから構成される簡単に手に入る化合物。12CaO・7Al2O3という化学式から分かるように、身近にありふれた元素しか含まない。

 細野秀雄・東京工業大学フロンティア創造共同研究センター教授を中心とする研究チームが用いた方法は、12CaO・7Al2O3が持つ0.5ナノメートル(ナノは10億分の1)という微細なカゴの中に、特別な工夫によって多数の電子を入れる。この結果、温度が下がると電気抵抗が小さくなるという金属特有の性質と、さらに、「近藤効果」と呼ばれる非磁性金属に共通に見られる性質を持つことが、確認された。

 新しい材料は、室温での電気抵抗が金属マンガンと同程度で、黒鉛より1けた小さい。また、可視領域の光を70%透過し、向こうが透けて見えるという性質も持つ。

 透明な金属は、液晶ディスプレイやテレビなどに不可欠な材料だが、現在はインジウムという希少金属に頼っている。希少元素に依存せず、ありふれた元素のみを使って、ナノの構造の工夫次第で、新しい機能を発現できる可能性を明快に示した研究成果、と研究チームは言っている。

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