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次世代スパコン・プロジェクトからNEC撤退 設計大幅見直し必至に

2009.05.14

 NECは14日、文部科学省「最先端・高性能汎用スーパーコンピュータの開発利用」プロジェクト(次世代スパコン・プロジェクト)から撤退することを明らかにした。

 大型の国家プロジェクトから大企業が撤退するのは異例。NECは今後プロジェクトに参加していくことで発生する百数十億円の負担を避けるのが目的だと説明している。プロジェクト実施主体の理化学研究所は「性能や運用時期について変更はないが、システム構成などを大幅に見直さなければならない」と言っており、神戸に建設中の施設工事を中断し、設計変更を行った後、工事を再開するという。

 次世代スパコン・プロジェクトは、文科省が2006年度から実施している国家基幹技術の一つ。10ペタFLOPSという世界最高性能のコンピュータシステムを開発し、全国の研究者や企業などに広く共用することで、日本の国際競争力を高めることを目指す。予算総額は1,154億円。理研の次世代スーパーコンピュータ開発実施本部が中心となって、06年9月に概念設計を開始し、文部科学省、総合科学技術会議の評価を経て、07年9月にシステム構成を決定した。その後、理研と富士通、NEC、日立製作所の3社で詳細設計を進め、現在、最終段階に達している。その後、製造段階(試作・評価、製造)に移行する計画になっていたが、NECは製造段階には参加しないことを表明した。

 システム構成は、実効性能を重視するとともに、国内のスパコン開発能力を維持する狙いから、スカラ部とベクトル部を併用する複合システムを採用した。スカラ部は、データを細かい単位で順次処理する仕組みの中央演算処理装置(CPU)で構成され、ナノデバイスの構造解析、遺伝子やタンパク質などのデータ検索・解析のように、複雑なデータアクセスを行う計算に適している。ベクトル部は、データを大きな単位で連続的に処理する仕組みのCPUで構成され、大気や海洋の地球規模の大循環解析、航空機や自動車周りの流体解析など、連続的なデータ処理が多い計算に適している。

 NECはこのうち、ベクトル部の開発とベクトル部とスカラ部を結ぶコネクト部を担当していたため、NECの撤退は次世代スパコンの構成そのものの抜本的な見直しにつながるのは必至。さらにNECとともにベクトル部の開発を担当していた日立の撤退にも波及する可能性がある。

 設計変更によりスカラ部のみで演算部を構成することになり、ベクトル部が得意とする流体解析などのアプリケーションでは実効性能が出なくなる可能性もあるため、アプリケーション開発についても大幅な計画変更が必要になる。さらに神戸に建設中の建物についても、冷却設備がベクトル部とスカラ部では異なることから、設計の変更が必要とみられる。

 理研は、今年度中に新たなシステム構成をまとめたいと言っている。

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