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農学教育体制の見直し提言

2008.04.09

 農学教育の現状は社会の期待にこたえる体制になく、見直しが必要、とする報告書を日本学術会議の生産農学委員会農学教育分科会がまとめ、公表した。

報告は、農学を「物理科学などの自然物の認識科学とは異なる科学、つまり設計科学の一つの領域」で、「自然科学と人間科学を統合し、生物生産や地球生態環境をめぐる特定の価値目標の実現を目指す実際科学」でもある、と位置づけている。

 これに対し、現在の農学教育の体制は「小規模で限定的な分野で構成されており、多くの学部は農学の一部分を分担しているに過ぎず、世界的な規模での食料不足や地球環境の破壊といった困難な課題を解決するためには不十分と言わざるを得ない」としている。

 今後の農学教育に求められるものとしては、「世界の農業や農学の動向を総合的に学習し、多様な知の修得と活用を促す分野横断型の教育体制の構築」、「高い社会規範を持ち、地球規模の新たな課題を解決するための科学的な理論と方法を開拓し、実践する気概、能力、知識、技能や態度を有する人材の養成」などを挙げ、社会の期待、要請にこたえられる大学、大学院の教育体制に変えることを提言した。

 最近、頻発している食品の安全性に関する事件・事故についても触れ、「これらはその根底には人間としての資質に加えて、職業倫理あるいは生命倫理の破壊と呼べる社会規範や順法精神の崩壊がある。これらに対しても、農学教育は教養教育などとの整合性を保ちながら取り組まなければならない」と人材養成の重要性を重ねて強調している。

 また、初等中等教育へ農学教育を導入する意義についても「農学は自然と人間を対象にした学術であり、すでに子どもの成育環境を改善するために取り入れられている自然体験、集団体験や運動体験などの体験学習は、総合的な理科教育と合わせて豊かな人間性の涵養とともに伝統や文化の教育にも有効である」と評価している。

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