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原子力発電の今後に米国の影響は

2011.11.10

 9日付、日経新聞朝刊の特集記事が興味深い。ペリー元国防長官、ブレア前国家情報長官、シーファー前駐日大使、アーミテージ元国務副長官、ナイ元国務次官補など米政府の要職にあった人々と、日米関係に詳しい日本の学者、元外務省高官たちによるシンポジウム「東日本大震災、日米同盟の未来」の内容が詳しく紹介されている。

 黒船を率いて来航したペリー提督の子孫で、自身、太平洋戦争直後の2年弱、米軍人として日本に滞在した経験のあるペリー元国防長官が、次のように発言している。

 「(原発を廃止すれば)日米の影響力は低下する。日米は前面に立ち安全な運転手順、規制をつくるべきだ。…日本が原発を再稼働するにあたり米海軍の原子力潜水艦と原子力空母での安全の取り組みが参考になる」

 また保守系のシンクタンクである米戦略国際問題研究所のハムレ所長(元国防副長官)は「日本が原発を放棄することは世界をより危険にする。核拡散防止条約(NPT)体制で(中印など)責任感の弱い国に主導権を奪われるからだ。日本は安全な原発建設で世界をリードしなければならない」と主張している。

 ペリー氏はまた、「現在の最大の危険はテロ組織が核兵器を手にし、日米の都市で爆発させることだ」と語り、「パキスタンやインド、北朝鮮、そして多分イランが民生用の原子力開発を隠れみのにして核兵器開発を進めていることに留意すべきだ」とも言っている。

 米国は世界最大の原発保有国だが、1979年のスリーマイルアイランド原発事故以来、新しく建設に着手した原発は一基もなく、数も1990年をピークに減っている。

 原子力をエネルギー源としてのみ利用しようとしている日本の存在は、米国にとって非常に都合がよい—。両氏の発言から、あらためてそう感じた人も多いのではないだろうか。アーミテージ元国務副長官の発言は、さらに明快だ。「日本の核武装は地域情勢を不安定にする」

 中川正春・文部科学相は10月19日に日本記者クラブで行った記者会見で「今後の原子力発電の進め方については、来年夏までに政府としての考えをまとめる。既に新原子力政策大綱策定会議の議論が始まっており、日本のエネルギー政策、核燃料サイクルを中長期的にどのように位置づけるかによって、方向性を定める」と語っている。

 米国の意向が、この作業に今後どの程度、影響してくるのだろうか。

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