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子供を甲状腺がんから守る態勢は?

掲載日:2011年4月4日

枝野官房長は3日の記者会見で、福島第一原子力発電所周辺地域の子供にスクリーニングレベルを超える甲状腺被ばくは見られなかった、と発表した。

同長官によると、3月28日から30日まで福島県川俣町と飯舘村で0-15歳の子供約900人に対し、甲状腺被ばく調査をした結果と、それ以前にいわき市などで実施したものを含め、いずれも緊急被ばく医療が必要と判断されるスクリーニングレベルを超えた子供はいなかったという。

川俣町は政府が12日に「避難」を指示した福島第一原子力発電所から半径20キロ以内にも、15日に「屋内退避」を指示した半径20-30キロの範囲にも含まれていない。飯舘村といわき市も「屋内退避」対象の半径20-30キロに含まれている地域は一部だけで大半の地域は、「避難」「屋内退避」の対象外である半径30キロ外にある。

原子力事故などによって放射性物質が周辺環境に放出された際、最も健康への危険が高いのは放射性ヨウ素131といわれている。成長ホルモンを分泌する甲状腺の活動が活発な乳幼児ほど放射性ヨウ素131を甲状腺に取り込んでしまい、将来、甲状腺がんになる危険が高いためだ。実際、1986年に起きたチェルノブイリ原発事故では放射性ヨウ素131で汚染された地域の子供の多くが甲状腺がんになったことが分かっている。

日本ではこうした過去の経験を基に原子力安全委員会が「原子力災害時における安定ヨウ素予防服用の考え方と「原子力施設等の防災対策についての中で、どういう場合に放射性ヨウ素の取り込みを防ぐための安定ヨウ素剤を使ったらよいかを詳しく示している。外部被ばくで10-50ミリシーベルト、内部被ばくで100-500ミリシーベルトになったら「屋内退避」が必要で、安定ヨウ素剤の服用については小児甲状腺等価線量の予測線量で100ミリシーベルトという指標が示されている(松原純子・元原子力安全委員会委員長代理によると、遠隔地で安定ヨウ素剤を配布するのに時間がかかるといった地域事情も考慮し、実施にあたっては小児甲状腺等価線量で100-500ミリシーベルトと幅を持たせている)。

こうした原子力安全委員会の放射線防護の考え方から見る限り、子供の甲状腺に対する予測、評価は相当量の放射性物質が周辺に放出されるか、されると予測された場合、「避難」などの指示が出るのと併せて速やかに実施されなければならないはずではないのか。実際に原子力安全委員会には「緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)」という予測システムがある。放射性物質の放出源の情報に気象条件、地形データを入れると、周辺地域の大気中放射性物質濃度やその場所の人々の被ばく線量を迅速に予測できるシステムだ。

ところが原子力安全委員会が、SPEEDIを使って周辺の予測被ばく線量を公表したのは、地震発生から12日たった23日。1号機原子炉建屋での水素爆発(12日)、3号機原子炉建屋内での水素爆発(14日)、2号機格納容器内圧力抑制室での爆発(15日)が相次いで起きた後の16日になってSPEEDIによる試算の検討を始めたという。陸向きの風向きとなる20日以降にならないと大気中の放射性核種の濃度が測定できず、放出源情報が推定できなかった、という説明をしている。

周辺への放射性物質の放出が多かったと思われる時に調査をしなかったことの疑問について、枝野長官は「心配なのは甲状腺への影響。時間がたって調査をしたのでは半減期が短いヨウ素が少ない数値になるのではないか確認した。15日ごろにもし被ばくしていたらという想定で逆算して、危険な水準に達している子供はいないというデータになっている、という報告をもらった」と記者会見で語った。

原子力事故などの際に最も重視される放射線防護対策の一つは、子供を甲状腺がんから守ることではないのか。なぜ、事故直後に安定ヨウ素の服用を検討しなかったのか、あるいはできなかったのか。事故から何日もたって、結果として心配なかった、というなら、それも併せて明らかにしないと、この後の教訓にもならないのではないだろうか。

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