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英王立協会会長が有人宇宙計画批判

2008.04.21

 科学、技術に関するニュースの豊富なウェブサイト「Technobahn」に、英王立協会会長が「欧州は有人宇宙計画よりも無人宇宙探査に専念すべきだ」とBBC放送のインタビューで語ったという記事が載っている。

 記事によると、英国はサッチャー政権の決定以来、有人宇宙計画は封印されてきた。欧州宇宙機関(ESA)への拠出金も欧州連合(EU)の主要国中、最低。ESAは2月に実験モジュール「コロンバス」を、国際宇宙ステーションに取り付け、これを核として今後も有人宇宙計画を推進していく姿勢を明確にしている。

 著名な天文学者である王立協会会長、マーチン・リース卿は「有人宇宙計画はおカネの無駄遣い。欧州は無人宇宙探査の分野で世界をリードすべきだ」とBBCに語った。さらに「アポロ計画による有人月旅行以来、有人飛行がマスコミの紙面を賑わすことはほとんどなくなった。注目を集めたのはむしろ、ハッブル宇宙望遠鏡による成果だ。私が米国人であれば月に再び人を送り込むとか有人火星飛行など大反対していただろう」と述べたという。

 日本の有人宇宙計画は欧州よりも遅れた。スペースシャトル計画に対してESAが、「スペースラブ」の開発を担当し、地球周回軌道上で宇宙実験を行い、カナダもマニピュレータの開発で協力したのに対し、日本は参加しなかった。当時、ロケット開発が優先され、シャトル計画にかかわる余裕などなかったためと言われている。

 こうした経過もあり、日本は米レーガン政権主導でスタートした国際宇宙ステーション計画には当初から参加した。その結果得られたもの、特に「有人宇宙活動」に加わったために日本が得たものは何か、いずれきちんとした総括を求められることになるのだろう。リース卿のような指導的立場にある人が、このように明快な問題提起をするかどうかはともかく。

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