レビュー

塾は禁止できるか

2006.12.25

 連日のように紙面をにぎわしている政府の教育再生会議に関し、24日朝刊の日経新聞社会面、朝日新聞総合面に、興味深い記事が載っている。

 野依良治・教育再生会議座長が、8日の「規範意識・家族・地域教育再生分科会」で「塾の禁止」を主張していたことが23日、同会議のホームページに公開された議事要旨で明らかになったことを伝える記事だ。

 両紙とも、野依氏は「塾はできない子が行くためには必要だが、普通以上の子どもは禁止にすべきだ」「我々は塾に行かずにやってきた。塾の商業政策に乗っているのではないか」と繰り返し、主張したと伝えている。

 両紙によると、野依氏の発言に対しては、JR東海会長の葛西敬之氏が反論、国際教養大学長の中嶋嶺雄氏が賛同した、となっている。

 記事の基になった分科会議事要旨を見てみると、「公教育が再生されれば、塾は自然と競争力を失っていく。再生されれば結果的になくなる。再生が先にある」「入試をやめて、卒業試験にすれば塾はいらなくなるかもしれない。塾禁止が先ではない」と2度にわたって事務局が、口を挟んでいる。この発言は、日経新聞、朝日新聞とも触れていない。

 教育再生会議事務局の考え方は、要するに「塾業界に営業をやめろなどということを、提言に盛り込むなどできるわけはない」ということだろう。

 では、野依座長の主張は、現実をよく考えない提言、と切り捨てられるものだろうか。

 安倍首相も出席した10月25日の第2回教育再生会議で、野依氏は「市場経済の行き過ぎが、非常に教育を損ねていると思う」としたうえで、「それぞれのセクター、あるいはそれぞれの機関が、自分たちのやっていることが本当にこどもたちのあるいは青少年のためになっているのかどうか。私はそのあたりに問題があるのではないかと思っております」と発言しているのである。

 さらに、自分たちの会社などで行き過ぎた商業主義にかかわっている人たちの「多くは、やはり家庭の父であり母であるということで、家庭に入ればダブルスタンダードになるのではないか」とも。

 いくら「家庭における教育も大事」などと言っても、説得力がない。親が仕事先でやっていることと、家で子供に言うことがまるで違っていては、という意味だろう。(日経新聞、朝日新聞からの引用は東京版から)

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