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東京スカイツリー開業 日本の伝統生かした設計

掲載日:2012年5月22日

東京スカイツリーが22日開業した。設計には日本の伝統が生かされている。昨年2-3月に当サイトに掲載したデザイン監修者、澄川喜一氏(彫刻家、元東京芸術大学 学長、文化功労者)のインタビュー記事から東京スカイツリーそのものの技術的、芸術的な魅力をあらためて紹介する。

タワーとしてだれもがまず思い浮かべるパリのエッフェル塔と東京タワーは、東京タワーの方が、だいぶ軽量になっているものの形は似ている。東京スカイツリーが両塔と大きく異なるのは、まず形が左右対称ではないということだ。さらに正方形の敷地に4本足で踏ん張っている2つの先輩塔に対し、東京スカイツリーは地面に接する部分が正三角形。東京タワーの敷地の広さが一辺100メートルの正方形であるのに対し、東京スカイツリーは、正三角形の一辺は約70メートルしかない。それで倍近い高さの塔を支えている。

それを可能にしているのは、エッフェル塔、東京タワーが板材を使っているのに対し、強度の大きいパイプ材を使っていることだ。足元の一番太いパイプの直径は2メートル30センチある。パイプ材を使った構造を可能にしたのは日本の優れた溶接技術で、パイプとパイプをリベットで止めるよりも強度が確保できた。

スリムな形を可能にしたもう1つの技術的特徴は、日本古来の五重塔の仕組みを取り入れたこと。法隆寺の五重塔をはじめとして、日本には近世以前に造られた五重塔が20以上あるが、いずれも形はスリムで、かつ地震や台風で倒れていない。この大きな理由は、真ん中に「心柱(しんばしら)」があることだ。心柱の周囲に4本の四天柱とさらに外側に12本の「側柱」があって、これらが建屋(塔身)を支えている。真ん中の心柱は一番上の五重目で塔身と接しているだけだ。それも固定されているのではなく、「露盤」という部分でわずかな隙間を空けて触れ合っている。

この構造が、地震や強風に対して塔身と心柱がそれぞれ勝手に揺れるという、振動に強い効果をもたらす。東京スカイツリーにも、心柱に相当する直径8メートルの中空の心棒(鉄筋コンクリート製)が中心にすっくと立っており、それを囲むようにもう1つのパイプが造られている。この中にエレベータ設備が据え付けられている。心棒とエレベータ設備が入った周囲のパイプは全く触れ合っていない。五重塔の知恵が生かされているわけだ。

油圧ダンパーや揺れを戻すバネという今の最新技術を組み合わせることで、アンテナを付ける最上部は動かず、634メートルの高さの真ん中3分の1程度だけは逆に動きやすいという柔軟な構造となっている。

デザインとしては彫刻家、澄川氏の数多い作品を際立たせている「そり」と「む(起)くり」という形が取り入れられている。地上では正三角形だった形が上に行くに従って円形になる独特の形が、形状としての意外性に加え、太陽の光を受けた時の塔全体が微妙な色合いの変化を示す効果を挙げている。

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