夏休みの旅行やお盆の帰省で、美しい星空を見上げられる時節となった。今月は定番のペルセウス座流星群のほか、惑星たちの面白い動きが注目される。秋口には3年ぶりの皆既月食もある。天文ファンならずとも好天の日には気温や安全、マナーに注意しつつ、宇宙を体感するひとときを過ごしては。

はかなさにこそ、味わいのある流星
ペルセウス座流星群は、流星(流れ星)が特に多く現れる三大流星群の一つ。国立天文台によると、今年は13日午前5時頃、発生のピーク「極大」になると予想される。ただこの時間帯には、もう空が明るい。多く見えるのは、その前の12日深夜から13日未明になりそうだ。東京では13日午前3時台に最も多くなると見込まれ、空の暗い場所なら1時間あたり30個ほど。また、前日12日の同時間帯に同15個ほど、翌14日に20個ほどの予想だ。月明かりのせいで例年より見えにくいため、なるべく月から離れた北寄りの空を眺めるのがコツかもしれない。
同じ◯◯座流星群でも、極大の時刻や月明かりなどとの兼ね合いで、年により条件は変わる。ペルセウス座流星群が次に好条件となるのは2029年という。実際にどの程度観察できるかは、場所や気象条件、熟練度、視力などによる。極大予想からずれた時間に、予想外に多く出現することもある。

流星は、宇宙空間のチリが地球の大気圏に突入して燃え尽きる際、成分が光って夜空に筋を描く現象。彗星(すいせい=ほうき星)の通り道に多くのチリが帯状に残されており、地球が毎年そこにさしかかる際に大気に飛び込んで、流星が多発する流星群が起こる。つまり、地球がチリの帯を通り、流星群が起こる時期は毎年決まっている。チリを残した天体「母天体」はペルセウス座流星群の場合、スイフト・タットル彗星だ。
それぞれの流星群には、流星が四方八方へと飛び出していく源のように見える空の一点「放射点」がある。個々の流星の光跡をさかのぼって延長すると、放射点に集まる。流星群の名は主に、放射点が位置する星座に由来する。ペルセウス座流星群の放射点は、ペルセウス座付近にある。
一つ一つの流星がいつ、空のどこに出るかは全く予測できない。なるべく空が暗く開けた場所で、肉眼で観察する。問題ない場所なら、シートを敷いて寝転ぶと観察しやすい。流星は突然で一瞬の現象だが、その“はかなさ”にこそ味わいがある。夏の思い出にできたら素敵だ。
ちなみに、ペルセウスはギリシャ神話の勇士。髪の毛がヘビでできた怪物「メドゥーサ」を倒し、その帰り道には海の怪物に襲われている娘「アンドロメダ」を救い結婚した。そのアンドロメダは古代エチオピアの王「ケフェウス」と女王「カシオペヤ」の娘。実際、星空ではこれら4つの星座が隣接しており、こうした物語を知って眺めると楽しみが深まる。
金星と木星、月と土星、水星…にぎやかに
今年はペルセウス座流星群の時期に、地上からの見かけ上、互いに極めて接近する2つの惑星にも注目したい。11~13日の日の出前に東の空で輝く「明けの明星」金星が、木星と接近する。それぞれマイナス4.0等級、マイナス1.9等級と明るい。

また12日夜から13日未明にかけて、月と土星が並んで見える。東京で午後8時半頃、明るさ0.7等級の土星が東の空に昇ってくる。10時頃以降、土星のすぐ近くで、満月を過ぎた月が輝くという。

19日、水星が「西方最大離角」になる。水星は太陽系の最も内側の惑星で、地球上のわれわれが見られるのは、太陽から見かけ上、最も離れた「最大離角」の前後に限られる。惑星が太陽の西側に見える時が西方最大離角で、明け方の東の空にある。観察するには、東の空がよく開けた場所を選びたい。東京では17~24日の日の出の30分前に、高度が10度を超えて見つけやすいという。
29日は旧暦7月7日にあたり、「伝統的七夕」(旧七夕)と呼ばれる。伝統的七夕の日は年により変わる。現在の7月7日は例年、多くの地域でまだ梅雨が明けていないが、伝統的七夕の空なら織姫と彦星を見つけられるかもしれない。ともに1等星で、織姫はこと座のベガ、彦星はわし座のアルタイル。両者をはくちょう座のデネブと結ぶのが、学校でも習う夏の大三角だ。スマホを空に向けると星座や星の位置が分かるアプリを使えば、初心者でも星を探しやすい。
3年ぶりの皆既月食、全国で
9月8日には、全国で3年ぶりに皆既月食が見られる。午前1時27分に欠け始め、2時半~3時53分に完全に月が地球の影に入る皆既となり、4時57分に食が終わる。

月食は太陽光が当たる地球の影の中を月が通過することで、地球から月が欠けて見える現象。太陽と地球、月が一直線に並ぶ満月の時に起きる。ただし地球から見た月の通り道(白道)が太陽の通り道(黄道)に対し少しずれているため、満月は地球の影からずれた所を通ることが多い。このため、満月の度に月食が起こるわけではない。

太陽が欠けて見える日食では、月が地球に落とす影の範囲が限られるため、観察できる地域は限られる。これに対し月食は、月面に地球の影が落ちる現象であり、発生時間帯に月が見える場所ならどこでも見える。
皆既月食では月が地球の影に完全に入り込むが、真っ黒で見えなくなるのではなく、赤銅色などと呼ばれる赤みを帯びる。夕日が赤いのと同様、太陽光のうち波長の長い赤い光が散乱しにくく地球の大気を通過するためだ。またこの大気がレンズのようになって太陽光を屈折させるため、赤い光が皆既食中の月面を照らす。大気中のチリの量などにより毎回異なる微妙な色合いが、皆既月食の見どころの一つとなる。さて、今回は?
なお9月2日は、北陸から北関東などにかけて皆既日食が見られる2035年までちょうど10年の日だ。筆者は子供の頃に児童書でこの情報に触れ、「還暦を過ぎる」と思いつつ、ずっと好天を祈っている。
関連リンク
- 国立天文台「ほしぞら情報2025」