レビュー

情報科学、環境科学系は弱い?

2016.03.28

小岩井忠道

 英国の大学評価機関「クアクアレリ・シモンズ(Quacquarelli Symonds)」が22日発表した「分野別QS 世界大学ランキング」は、日本の大学に対する評価に加え、日本の得意分野、不得意分野がうかがえて興味深い。

 QS 世界大学ランキングは、文系、理系合わせて42分野ごとに世界の大学をランク付けしている。理工学系のランキングを見ると、分野によって上位50位内に入っている日本の大学の数にばらつきがあるのが分かる。数が多かったのは化学、物理・天文学、化学工学、材料科学の4分野。化学は、東京大学の8位をはじめ、14位に京都大学、21位に東京工業大学、25位に大阪大学、34位に東北大学が入った。

 物理・天文学は、東京大学8位、京都大学19位、東京工業大学25位、東北大学35位、大阪大学38位、化学工学は、京都大学9位、東京大学11位、東京工業大学23位、大阪大学37位、東北大学48位、材料科学は、東京大学17位、東北大学22位、東京工業大学24位、京都大学25位、大阪大学44位となっている。3分野とも順位に多少変化はあるものの5大学の顔ぶれが全く同じだ。

 化学工学、材料科学以外の工学系分野はどうか。機械・航空・製造工学が、12位の東京大学以下、京都大学28位、東京工業大学32位、東北大学40位と4大学が入り、まずまずの評価というところだろう。土木建築工学も、東京大学10位、京都大学18位、東京工業大学38位と3大学が入った。ただし、電気・電子工学は、東京大学16位と東京工業大学19位の2大学のみ。近年、学生の人気低下が指摘されているこの分野の地盤沈下をうかがわせる結果となっている。

 さらに、見劣りするのがコンピューター・情報科学分野。21位の東京大学以外、日本の大学名は見当たらない。地球環境保全に大きく関わる環境科学、地球・海洋科学、地理学といったところも、50位内に入っているのは東京大学だけとなっている。

 日本の評価が比較的高いとみられてきた生物・医学系は、生物科学が京都大学の12位をはじめ、東京大学22位、大阪大学30位とまずまずの評価。医学は東京大学23位、京都大学49位、薬学・薬理学は東京大学16位、京都大学27位、歯学は東京医科歯科大学6位、大阪大学38位といずれも2大学が入った。

 大学の評価付けはいくつかの機関が行っているが、QSの評価は、論文の引用数など研究実績に加え、各国学者の評価や卒業生を受け入れた雇用主の評価も取り入れているのが特徴とされる。昨年、英国の教育誌「タイムズハイヤーエデュケーション」が発表した大学ランキングでは、日本の大学の順位が前年に比べ急に下がった。東京大学、京都大学ともランクを落とし、それ以外の200位内に入っていた3大学は200位外に落ちてしまっている。この理由の一つに、論文数の分析をする会社が変わったことが挙げられている。その結果として日本の大学の教育と研究に関する評価点数が下がり、特に論文の被引用数の激減が、全体の評価急落につながった、といわれている。(2015年11月25日ハイライト・鈴鹿医療科学大学学長 豊田長康 氏「選択と集中やりすぎると論文の質低下」参照)

 今回のQSによる分野別ランキングの順位に過度に反応する必要はない。ただし、日本の大学や各研究分野の国際的なレベルを知る参考にはなる、ということだろうか。ごく限られた大学しか、国際的には評価されていないらしい、といった…。

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