「象潟や雨に西施がねぶの花」。6、7年前までこんな芭蕉の句があることも、西施が人名であることさえ知らなかったから、偉そうなことは言えない。しかし、それまで縁のなかった秋田県にかほ市のふるさと宣伝大使を拝命してからは、にかほ市象潟にある芭蕉の句碑も数回、訪れている。その上、9日浙江大学で有力研究者たちにインタビューする合間に、その西施が入水したという言い伝えもあるという西湖を訪ねる幸運にも恵まれた。
春秋時代末期に越王から呉王に献上された西施には、もともと好きだった男性と逃げて幸せに暮らしたという説もあるそうだ。日本でも、小野小町の墓があちこちにあるようなものだろうか。
杭州市にある西湖は1元紙幣にも印刷されている有名な世界遺産だ。途中、改修工事もあったようだが、湖を横断する堤が唐の時代に造られたと聞いて、驚く。日本なら重要文化財などに指定され、所有者も自由に改修などもできないのでは。そんな立派な建造物が堤の中ほど湖にせり出す形で建っている。内部の十分なスペースを借りて、米国のアイスクリーム店が営業しているのに感心する。
杭州での宿舎は、浙江大学内にあり、大学関係の事務所なども入っている。上海のホテルにはなかったパソコンが部屋に備えてあったので、「Science Portal」で検索してみた。トップに出てきたのが、「Science Portal China」のサイトマップページ
だった。科学技術振興機構中国総合研究センターが運用する「中国の科学技術の今を伝える」サイトだから、中国人にもよく読まれているのは、納得できる。
続いてわが「Science Portal」のトップページ
が出てきて、その次が「Science Portal China」の今度はトップページだ。
4番目以降は、「Science Portal」の個別のサイトが並んでいる。4番目が「おすすめデータベース」という一見、地味なページ。なるほど、こうしたページが中国人には役に立つ情報が得られる場所として重宝されているのだろうか。続く5番目は「イベントカレンダ」。これは、編集者が日ごろ、最もサイエンスポータルらしい大事なページだと強調しているから、「納得!」という思いだ。それにしても国内に限定したシンポジウムなどの科学技術に関する催しが、中国からもよく見られているとしたら、意外ではある。
次は、一昨年3月の東日本大震災直後に急きょ設けた特設サイト「東北地方太平洋沖地震 福島原発関連情報」だ。中国の人々も大きな関心を寄せて、このサイトにアクセスしてくれた人が多いのだろうか。これもまた、腑に落ちる結果ということだろう。
さらに面白いのは、その後7位に「Webで読む機関誌(企業-化学-)」が入っていることだ。公的な研究機関と大学のページもあるのだが、企業の機関誌の方が先に挙げられていることに、公立研究機関や大学の人たちはどう思うだろうか。ただし、化学企業に関心が特に高い、とは決めつけられない。企業の機関誌のページの最初が化学企業だから、こうなっているかもしれないからだ。
その後に、やっと当サイトのオリジナルコンテンツのページが出てきた。「インタビュー」記事欄である。「サイエンスポータルの柱となる情報は、データ的なものであって、読み物類は客集めのようなもの」。当初から一貫して言ってきた編集者にとっては、これまた主張が裏付けられたことかもしれないと喜ぶべきだろう。さらに、その読み物記事の中でも「人」を全面に出したインタビュー記事が最初に出てきたことも、またずっと心してきたことだから、と。