レビュー

編集だよりー 2011年9月4日編集だより

2011.09.04

小岩井忠道

 「TOKYO JAZZ FESITIVAL 2011」を東京国際フォーラムAホールで鑑賞した。ジャズと呼ばれる音楽もいろいろあるようだが総じて難解というのが正直な感想だ。2年前だったか、同じ催しを聴いた時も、実はよく分からなかったことを思い出し、今回は出演者について最小限の知識を仕入れてから出かけた。

 東京国際フォーラムAホールというのは、一緒に聴いた高校の同級生で映画監督の小泉堯史氏(ジャズにも詳しい)によると「音響が悪い」とのこと。氏の監督デビュー作品「雨あがる」が1999年のベネチア国際映画祭で緑の獅子賞を受賞した後、国内初の特別試写会が開かれた場所でもあるのだ。無論、編集者にそこまで聞き分けられる耳などない。むしろ横幅も広い大ホールなので、舞台の両脇に大きな映像表示装置が備えられているのが実によかった。NHKが主催だから演奏の模様は後日、BS放送で放映される。舞台上のクレーンに据え付けられたカメラをはじめ、編集者が確認できただけで6台のカメラが演奏者たちの表情、動きを追う。放映されるのと同じと思われる凝った映像と、実物とを交互に見ながら音楽を楽しめるというのは実にぜいたくな気分、と知る。オペラもこんな具合で鑑賞できたら、歌手たちの表情をよく見たい時にも困らず、より楽しめそうだが、などと思いをめぐらす。

 2組目の出演者は、ピアニストの上原ひろみとタップダンサーの熊谷和徳だった。初めて知る名だったが、2人ともむしろ米国でよく知られているらしい。熊谷和徳の体の動きにも驚嘆したが、上原ひろみの表現力にもすっかり感服する。幼少時からヤマハ音楽教室でピアノと作曲を学び、その後米バークリー音楽大学を首席で卒業したというのも、「納得!」という感じだ。彼女が子どものころヤマハ音楽教室が実施する「ジュニアオリジナルコンサート」に何度も参加した、と知って思い出したことがある。

 ジュニアオリジナルコンサートというのは、有名な音楽家の曲を演奏するのではなく、15歳以下の子供たちが、自分で作った曲を演奏する。身近に音楽がある環境で育っていない編集者などから見ると奇跡としか思えない行為だ。ホームページを見ても出ていないのだが(海外活動が珍しくないからだろうか)、1980年代の後半にこの催しが米国のワシントンで開かれたことがある。次から次と登場する日本人の子どもたちが、苦もなく自作をピアノで演奏する様を見て、びっくりしたものだ。上原ひろみも、子どものころからこんな場数を何度も踏んできたのだろう。

 クラシックの演奏家になる道も彼女にはあったと思われる。ファンにとってはそうでなくてよかった、ということではないか。クラシック演奏家では、ジャズのようには作曲の才能を存分に発揮しにくかっただろうから。

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