宇宙開発戦略本部(本部長・麻生首相)が5月の宇宙基本計画に盛り込むと伝えられていた「日本独自の有人宇宙計画」は、2足歩行ロボットによる月探査となるようだ。
3日に開かれた宇宙開発戦略本部・宇宙開発戦略専門調査会でまとまった宇宙基本計画骨子は、通信社などの報道によると、2020年ごろに2足歩行ロボットによる無人月探査を目標とし、有人探査については1、2年程度かけて検討する、という。
「2025-30年ごろに有人宇宙船で飛行士とロボットを月に送り込む」。宇宙開発戦略本部の事務局が、宇宙基本計画に盛り込む有人宇宙計画案を3月6日に宇宙開発戦略専門調査会に提出した、と各紙が一斉に報じたことは、当欄でも既に紹介済みである(2009年3月16日レビュー「日本独自の有人月探査構想」参照)。5月までに宇宙開発戦略専門調査会が、そのような決定ができるものか、と首をかしげていたが、やはり、事務局側の意欲が少々先行していたことがうかがえる。
宇宙開発戦略専門調査会の座長は、寺島実郎 氏(多摩大学学長、日本総合研究所会長、三井物産戦略研究所所長)である。寺島 氏は3月23日に開かれた科学技術振興機構主催のシンポジウム「新時代の科学技術外交」で、「世界潮流と日本の進路-21世紀に期待される科学技術外交-」と題する基調講演を行っている。その中で、「有人宇宙飛行を日本はどうするかは、今後の技術外交にも絡み1つの大変悩ましい論点だ」としつつ、「有人宇宙飛行に関して日本はこういう方向にすべきだという大きな流れが見えてきたと思っている」と次のように語っているのだ。
「日本は10年以内に二足歩行のロボットで月探査をやるという方向性を目指そうじゃないかという議論が最終的な局面に入ってきている。人命を尊ぶ日本という文化の中において、命がけで人を月に送るだけの価値があるのかという議論が、当然のことながら存在する。ロボットの技術というのは日本の産業の将来あるいは世界の将来にとっても非常に意味があるだろうと思う。特に、少子高齢化社会に向かう日本において、例えば福祉ロボットとか介護ロボットにつながってくるようなロボット技術というのは大変重要だ。10年以内に日本は、インドや中国が人命をかけて突っ込んでいく月探査に、ロボットで鮮やかにクリアしてみせるんだという目的意識をはっきりさせて、そこに日本の持っている産業技術、ロボット関連のさまざまな試みをしている人たちの技術の集約点を持っていくということは、研究開発の方向性としても非常に興味のある展開ができるのではないか」
5月に出される宇宙基本計画の柱の一つは、ほぼ決まり、と言えるのではないか。