大阪市此花区の人工島「夢洲」で10月まで開催している大阪・関西万博(2025年日本国際博覧会)。電気事業連合会の「電力館」は万博への出展5回目となる。1970年の大阪万博、85年のつくば科学博、90年の大阪園芸博、2005年の愛・地球博を経て、今回は「エネルギーの可能性で未来を切りひらく」がテーマだ。核融合や無線給電など将来的な実用化が期待されるエネルギーの可能性を楽しく学ぶことができるというパビリオンを訪れた。
光り震えるタマゴが体験のスイッチや記憶に
木造の「大屋根リング」のそばにある電事連のパビリオン「電力館 可能性のタマゴたち」は、銀色のタマゴが半分ほど突き出たような外観だ。表面は多角形を組み合わせでできたように見え、最短ルート検索や都市計画で用いられる平面分割のボロノイ形状を採用。パビリオンのコンセプトである「可能性のタマゴ」を建築で表現している。

パビリオン内に入ると、暗がりの中で色とりどりに光るタマゴ型デバイスが並ぶ。来館者は好きなタマゴをひとつ選び首にかける。タマゴにはセンサーチップが内部に搭載されており、光ったり震えたり、約50パターンの振る舞いを見せる。来館者の体験のスイッチになったり、どのエネルギーについて学んだのかを記憶したりする。

タマゴを首にかけて進むのは、これから学ぶ未来のエネルギーについて概要を学ぶ「プレショー」だ。多くの画面で映像が切り替わり、タマゴの振る舞いが連動する。

核融合や潮流発電、うどんまで約30の展示
プレショーの後に「可能性エリア」に進むと、核融合や潮流発電、水素など約30のエネルギーが未来を切り開く可能性を持つものとして展示されている。核融合や振動力発電、無線給電、ヒートポンプでは、タマゴがスイッチのような役目をして、手で光を追ったり足踏みしたり、シューティングしたりと、ゲーム感覚の体験ができる。中には「うどん」と題した切れ端など食べなかったうどんを発酵によってバイオ燃料にする取り組みの紹介もある。



宝塚歌劇さながらの華やかな空間
エネルギーを「可能性エリア」で学んだ次は「輝きエリア」に移動する。天井からぶら下がった電飾が点や線、渦のような光を生み出し輝く。全体が光と闇に包まれた華やかな空間にいると、宝塚歌劇の電球で照らし出される大階段で繰り広げられるスターのレビューを思い出した。

最後は図鑑のように並んだパネル展示で、電力館で紹介される全てのエネルギーを解説している「ポストショー」のエリアを見て終わる。入って出るまで約45分を想定したパビリオンだという。
最先端を知りたくてパビリオンのはしご
1970年の大阪万博における電力館のテーマは「人類とエネルギー」で、関西電力美浜発電所から原子力発電による電気が初めて万博会場に送られた。エネルギーの科学原理を伝えたつくば科学博、様々な光を用いた大阪園芸博、地球温暖化問題を踏まえて環境配慮の取り組みを紹介した愛・地球博を経て、2011年の東日本大震災による東京電力福島第一原子力発電所事故後の出展となるパビリオンは「カーボンニュートラルのさらにその先を見据え、社会の基盤を支える電力業界ならではの視点で未来社会を描く」内容だという。
筆者は興味があった核融合を、ゲーム感覚で学べて楽しかった。最新事情を含んだパネル展示もあったが、もうちょっと最先端の取り組みを詳しく具体的に知りたかったので、国際機関館にある「イーター国際核融合エネルギー機構(ITER)」も見学した。

同機構のブースでは、EUを始め、中国、インド、日本、韓国、ロシア、米国が参画する世界最大の実験的核融合施設で使う核融合炉の模型もあった。電力館でも十分な情報量だったが、ひとつのパビリオンだけでなく、他の関連したパビリオンを探してはしごするのも万博の楽しみ方だなと思った。