スパコン世界一を決める第38回TOP500は米国太平洋時間11月14日午前6時に公表されたが、その表彰式が太平洋時間15日午後5時半から米国ワシントン州シアトルで開催された。表彰式は、上位システムの表彰と、今回の結果の分析および招待講演2件がなされた。
今回は、理化学研究所と富士通が共同開発したわれらが「京」が前回の性能からさらに2PFlops(ペタフロップス)以上向上し、6月に引き続き、10.51PFlopsと2位以下に大きく水をあけて表彰された。表彰式では6月に引き続きの連覇のみならず、10PFlopsの壁を世界で初めて超えたことにも賞賛が集まった。(PFlopsは1秒間に1,000,000,000,000,000回の実数計算をする計算速度)
表彰式では、1位と2位、および米国の1位、欧州の1位が表彰された(なぜか、アジア1位としては表彰されない。なお、世界3位は米国の1位である)。会場で配られたTop5までが書かれたしおりには、日本、中国が2システムずつ、米国が1システムのみであり、米国の焦りが感じられた。
結果分析は、Top500の author によるもので、以下のように示された。
「500位にランクインしているシステムの国別の性能値の総和で日本は2位。6月に欧州全体に追いついたが、中国の猛追を受けている。国別、メーカー別などさまざまな視点で分析されている。例えば、京のベンダーである富士通は性能合計値シェアで世界2位(1位はIBM)であるが、そのほとんどが京の貢献であり、多くのシステムの総合合計値で性能シェアを獲得しているIBMとは大きく違っている」
中には、意味があるのか?と思えるような評価指標もあったが、視覚的には非常によく工夫されていた。
ゲストスピーカとして、理化学研究所の渡辺貞プロジェクトリーダーが登壇し、「京」の説明を行なった。その次に、サンディア米国立研究所のSudip Dosanjh氏が US Exascale Plansという題で主に、米エネルギー省の活動について講演した。なんと、プレゼンテーションの冒頭で、多くの上院議員のサインが表示され、彼らが政府に対して、「エネルギー省でExa scale computing(Exa Flops規模のスパコン:Exa Flopsは1秒間に10の18乗回の計算をする性能)の予算をつけろ」と積極的に活動していることを示した。ちょうど同じタイミングで、日本では同時に国会での仕分けがあり、「京」の運営費の削減が指示されたのと大きな違いを感じざるを得なかった。
最後に全体への質問に対し、LINPACKベンチマークの創設者である Jack Dongarra教授から、「京」は性能そのもののみならず、29.5時間もの長い時間にわたり測定を続けられる安定性も評価すべきであるとのコメントがあった。
なお、スパコンは基本的に道具であり、このようなベンチマークではなく、どのように応用されて、人類の役に立つかがより重要であることは間違いない。一方、ベンチマークはスパコンの基本性能を評価するための意義ある指標であり、これの意味を否定するものではない。
「京」やその応用として開発された富士通のスパコンに関しては、今後の活用が期待される。実際、理化学研究所、富士通はじめ、各研究機関は応用に関して成果を出しつつあり、期待に背くことはないと考える。また、納税者として、利用した成果を求めることを考えるべきである。1位はゴールではない。
京は11月12日から18日にかけてシアトルで開催されているスパコンの学会SC11において、上記TOP500のほかに、HPCChalenge Awardの4種目中4種目、アプリケーションプログラムの実行成果を表彰するゴードン・ベル賞も受賞し、6冠を完全制覇した。