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コラム - インタビュー -

第3回「『この病気にこの薬』から『この人にこの薬』」

東京女子医大学長 高倉公朋 氏 | 東京女子医大教授 松岡瑠美子 氏

掲載日:2006年9月26日

「たこつぼ型からトータル医療へ -患者のための医療『統合医科学』とは」」

医療に対する関心がますます高まっている。たこつぼ型からトータル、既製服からテーラーメードの医療へ。患者、社会の双方にとって理想的な医療を目指す拠点として国際統合医科学インスティテュート(IREIIMS)が発足した。
この大型プロジェクトを率いる東京女子医大の高倉公朋学長、松岡瑠美子教授に、新しい医療について尋ねた。

- 統合医科学についての具体像を、もう少しご説明願えますか。

松岡瑠美子 氏

松岡瑠美子 氏

患者さんの血液から得られた4,000の細胞株は、20年かけて集められたものです。心臓血管疾患が中心ですが、がんも一部含まれています。この細胞株を用い、疾患遺伝子、疾患タンパクの解析を行い、その成果を基に超早期診断、予防、治療を可能にする医療を目指します。

個人の遺伝子情報と実際の臨床データにより、将来、病気にかかるかどうかを予測することが大事なのですが、そのために「高度の人間ドック」という検査を行っています。ふつうの集団検診の検査項目は14です。人間ドックでも32項目ですが、「高度の人間ドック」では100項目以上あります。

ここまで総合的に診ていきますと、遺伝的なものから気質、体質まで見えてきます。今の医療は対症療法です。「根治」という言葉はこれまで医者としては、いいにくかったことなのですが、ようやくその目標が見えてきたと考えております。

高倉公朋 氏

高倉公朋 氏

再生医学などの新たな治療法開発から、漢方薬といった伝統・代替医療の評価などプロジェクトは5つに分かれていますが、病気を早く見つけて早く治す。それが、このプロジェクト全体の目指すところです。

私どもは「オーダーメード医療」と言っております。「肺がんならこの薬」ではなく、「この人にはこの薬」という医療です。

そのための診断法を確立するのも、重要な目的です。DNAなどを調べることによって、胃がんであれば、どういうタイプの胃がんであるかが、いまは分かるようになっています。

授業風景

このような診断が小さなDNAチップで簡単にできるようにすることも、目標の一つです。いろいろな病気ごとにDNAチップができれば、簡単な検査でどういう治療をすればいいかも分かってきます。

10-20年後には、こうしたチップがないと診断はできないということになりそうで、いろいろな企業が作ろうとしています。おそらく巨大産業になるでしょう。

- 「治療から予防へ」がもたらす効果についてさらに伺いたいのですが。

高倉公朋 氏

高倉公朋 氏

例えば、がんの場合、肺がんも乳がんも早く見つかれば治ります。しかし、実際には長期の入院となる患者さんが多いのです。

症状が進んでしまってから治療を受けるので、手術だけでは治らず、放射線治療などほかの治療も、となるわけです。国立がんセンターの統計では、がんの治癒率は50%です。

超早期診断によって治癒率を50%から70%や80%にできたらどうでしょう。患者さんの長期入院も少なくなるし、医療費削減という国家的な要請にもこたえられます。

(続く)
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高倉公朋 氏

高倉公朋 氏のプロフィール
専門は脳神経外科。1958年東京大医学部卒。68年国立がんセンター脳神経外科医長。81年東京大医学部教授。92年東京女子医科大教授。97年同学長に就任。東京大名誉教授。国際脳神経外科学会連合名誉会長。米国脳神経外科アカデミー会員。ドイツ脳神経外科学会会員。

松岡 瑠美子氏

松岡 瑠美子氏のプロフィール
1972年横浜市立大学医学部進学課程卒業。79年ウィスコンシン大学心臓病理科研究員。81年ボストン小児病院(ハーバード大学医学部小児科)循環器科分子細胞生物学部門研究員。84年東京女子医科大学循環器小児科助手。2001年同大学先端生命研究所講師、同大学循環器小児科講師。2004年同大学遺伝子医療センター講師。05年同大学国際統合医科学インスティテュート特任教授。

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