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認知症の進行抑える化合物を発見 効果的新薬へ期待

2015.12.18

 アルツハイマー型認知症で起きる脳内神経細胞の減少を抑える化学物質を見つけた、と国立長寿医療研究センター(愛知県)、理化学研究所、同志社大学の共同研究チームが発表した。この化合物は既に使用されている不整脈の薬に含まれており、臨床試験で効果と安全性が確認できれば効果的な新薬になる可能性がある。研究成果は英科学誌に発表された。

 アルツハイマー型認知症の患者では、神経細胞内にある「タウ」と呼ばれるタンパク質が異常な形で集積して神経細胞が減少することがこれまでの研究で分かっている。研究チームは、理化学研究所が保管する天然化合物ライブラリーの中からタウが集まる現象を抑える化合物を探索した。その結果、不整脈や気管支ぜんそくの治療薬である「イソプロテレノール」にも含まれている化合物がタウ凝集を抑える効果があることをマウスの実験で確認した。実験は、タウが過剰に作られて認知症のような症状を起こすモデルマウスを使って実施。通常3カ月で神経細胞が目立って減少するが、イソプロテレノールを餌に混ぜて投与したところ、神経細胞は減少せず、脳機能の低下や行動異常も抑えられた、という。

 アルツハイマー型認知症患者は、脳にタンパク質「アミロイドベータ」が蓄積することが分かっている。研究チームは、主にアミロイドベータに着目したこれまでの薬の開発とは異なり、タウに着目した効果的な新治療薬の開発につながる、と期待している。現在国内で4種類の薬が承認されているが、症状の進行を確実に止め、回復する決定的な治療薬はまだない。

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