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腸内細菌と免疫系の支えあいを発見

掲載日:2014年7月14日

腸内に生息する膨大な細菌と免疫系との間で、支えあうように相互の制御が行われていることを、理化学研究所(理研)統合生命医科学研究センター(横浜市)のシドニア・ファガラサン(Sidonia Fagarasan)チームリーダーと東京大学大学院新領域創成科学研究科の服部正平(まさひら)教授らの共同研究チームがマウスの実験で確かめた。腸内細菌を利用した健康維持や治療法につながる発見といえる。論文が米科学誌Immunity7月17日号に掲載されるに先立ち、7月10日付のオンライン版で発表された。

ヒトの腸管内には、500~1000種類、総数100兆個もの腸内細菌が共存している。この腸内細菌叢(そう)が腸管の免疫系を適切に活性化して、ヒトの健康は維持されている。しかし、バランスのとれた腸内細菌叢を形成・維持するのに免疫系がどのように作用しているのか、逆に、バランスのとれた腸内細菌叢が免疫系にどのような影響を及ぼしているのかについて詳細な仕組みは分かっていなかった。

共同研究チームは、免疫系が機能していない免疫不全マウスで、腸内細菌叢と免疫系との関係を調べた。免疫不全マウスでは、正常マウスに比べて腸内細菌叢の多様性が顕著に減少し、その構成も大きく変化していた。免疫系(特にT細胞、B細胞を中心とした獲得免疫系)が腸内細菌叢のバランスを維持するのに非常に重要な役割を果たしていることがわかった。

次に、免疫系がどのような仕組みで腸内細菌叢のバランスを維持しているかを探るために、免疫反応を抑制すると考えられている制御性T細胞に注目した。T細胞を欠損した免疫不全マウスに、制御性T細胞を移入したところ、腸内細菌叢の多様性が増加し、バランスのとれた腸内細菌叢を再構築することができた。

この実験で、制御性T細胞はIgA抗体の産生を介して、腸内細菌叢のバランスを制御していることが裏付けられた。免疫不全や自己免疫疾患では、制御性T細胞がうまく働かないためにIgA抗体の産生に支障をきたして、腸内細菌叢のバランスが乱れ、さまざまな病気を起こしている可能性が浮かび上がった。

さらに、腸内細菌叢のバランスが免疫系に与える影響を調べた。通常の環境で飼育している3週齢のマウスに、バランスがとれた腸内細菌叢を投与すると、バランスが乱れた腸内細菌叢を投与した場合に比べて、IgA抗体が効率よく産生されることを見いだした。

これまで、免疫系は病原菌などの細菌から身を守るために、細菌を排除していると考えられてきた。しかし、従来の概念とは一見反対に、免疫系は腸内細菌叢を排除しないだけでなく、代わりに腸内細菌叢のバランスを積極的に維持することでも、ヒトの健康を保っていることが明らかになった。

共同研究チームの河本新平(かわもと しんぺい)研究員は「われわれの研究で『腸内細菌叢と免疫系との間の双方向制御によって健康が保たれている』という新しい概念を示せた。その意義は大きい。この新知見は、腸内細菌が影響を及ぼすと考えられるさまざまな疾患の予防や新治療法を考えるのにも役立つだろう」と期待している。

腸内細菌叢と免疫系の間の双方向制御の仕組み
図. 腸内細菌叢と免疫系の間の双方向制御の仕組み
(提供:理化学研究所)
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