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パーキンソン病における一酸化窒素の役割

掲載日:2013年7月17日

加齢とともに手足の震えやこわばり、緩慢動作などの症状が出るパーキンソン病は、神経伝達物質のドーパミンを作る神経細胞の機能が損なわれ、減少することで起きるとされる。奈良県立医科大学の小澤健太郎准教授と京都大学の高橋良輔教授、三重大学の田中利男教授らの研究チームは、体内に存在する一酸化窒素(NO)が、パーキンソン病によって働きが低下しているタンパク質「パーキン(parkin)」を活性化することで、神経細胞の機能障害を防いでいることを突き止めた。

パーキンソン病では、神経細胞に不要なタンパク質が蓄積することで、ドーパミンの分泌などの機能を傷害すると考えられている。この蓄積する“ごみタンパク質”を分解するのが「パーキン」だ。

研究チームは、培養したヒトの神経細胞を使って、蛍光を発するようにした“ごみタンパク質”がパーキンによってどの程度分解されるかを調べた。その結果、一酸化窒素を3時間加えた場合はパーキンの活性が増し、加えない場合の2倍ほど高い分解効果があった。

さらに、一酸化窒素を長時間加え続けると、逆にパーキンの活性が低下してくることも発見した。これは一酸化窒素が「パーオキシナイトライト」という物質に変化することでパーキンが不活性化され、細胞が機能障害を起こすことが分かったという。

今回の研究により、一酸化窒素がパーキンソン病の発症の抑制と促進の両方に働いていることが明らかになった。「2つの作用は異なるメカニズムによるもので、一酸化窒素の細胞保護に働く作用だけを起こす薬を開発できれば、新しいパーキンソン病治療薬になることが期待される」と研究チーム。

研究論文“S-nitrosylation regulates mitochondrial quality control via activation of parkin.(一酸化窒素はparkinの活性化を通してミトコンドリアの品質管理を制御している”は英国の科学雑誌『サイエンティフィック・リポーツ(Scientific Reports)』(オンライン版、16日)に掲載された。

* 一酸化窒素(NO):窒素と酸素からなる無機化合物。人体内で血管を弛緩させ、血圧を下げる働きがある。一酸化窒素を発生させるニトロ製剤は、狭心症の特効薬として広く使われている。一酸化窒素の機能の発見により、1998年のノーベル生理学・医学賞がフェリド・ムラド、ロバート・ファーチゴット、ルイ・イグナロの3氏に授与された。その後の研究で、一酸化窒素はパーキンソン病の発症にも関係していることが分かってきたが、詳しいメカニズムは不明だった。一酸化窒素がパーキンソン病を治す方向に働くのか、悪くする方向に働くのかも研究者によって異なる結果が出ていた。

一酸化窒素の作用の仕組み
一酸化窒素の作用の仕組み
(提供:奈良県立医科大学)
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