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免疫細胞をiPSで再生量産

掲載日:2013年1月8日

ウイルスに感染した細胞やがん細胞を攻撃する体内の免疫細胞「T細胞」からiPS細胞(人工多能性幹細胞)を作り、再び元の“元気な”免疫細胞を大量に作り出すことに、理化学研究所や東京大学のチームが成功し、それぞれ米科学誌「セル・ステムセル」(3日、オンライン版)に発表した。iPS細胞の免疫系への応用を示すもので、新しい対がん戦略法の一つにもなりそうだ。

T細胞を使ってがん細胞などの外敵を攻撃する「免疫療法」では、T細胞を体外で一度活性化させて再び体に戻す方法が取られるが、働けるT細胞の数がもともと少なく、活性化したT細胞自体も短命(1-2週間)で、効果が長続きしないという問題がある。

理化学研究所・免疫発生研究チームの河本宏チームリーダーらは、「悪性黒色腫(メラノーマ)」という皮膚がん細胞だけを攻撃するT細胞からiPS細胞を作った。このiPS細胞を培養してT細胞を大量に作ると、悪性黒色腫だけを攻撃する、元のT細胞と同様の反応性をもっていることが分かった。

また東京大学の中内啓光(ひろみつ)教授らのグループは、エイズ患者の血液から、エイズ・ウイルス(HIV)に感染している細胞だけを狙い撃ちにするT細胞を取り出してiPS細胞化し、再びT細胞に分化させた。このT細胞は狙い撃ちの能力を保ったまま増殖性が高まり、細胞の若さを示す「テロメア」部分も伸びて“若返った”という。

こうした手法で、大量に作った“元気な”T細胞を生体に戻す治療法も考えられるが、河本チームリーダーらは「T細胞になる前の段階で患者の胸腺に移せば、本来の生体環境でT細胞が作られ、持続的な抗腫瘍免疫が期待できる。それには患者本人の自己iPS細胞を使う必要があることから、あらかじめいろいろな種類の“T-iPS細胞バンク”を作り、用いる方が実現性は高い」と話している。

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