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胃がんは細胞の“iPS化”で発症か

掲載日:2012年11月2日

ピロリ菌の感染した胃に腸の細胞が現れる前がん病変は、人工多能性幹細胞(iPS細胞)でみられる細胞の「初期化」(リプログラミング)によって引き起こされる病的な細胞分化であることが、東京大学大学院医学系研究科の畠山昌則教授らの研究で分かった。細胞の病変にiPS細胞の機構が関わっていることを初めて示したもので、細胞のリプログラミング機構を阻止することで、胃がん発症の予防が可能になるかもしれない。研究成果は、「米国科学アカデミー紀要」(Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America:PNAS、オンライン版)に掲載された。

胃がんの種類の中で大部分を占める「分化型胃がん」は、胃の粘膜の中に腸(多くは小腸)の細胞が出現する「腸上皮化生(ちょうじょうひかせい)」を前がん病変として発症するとされる。この病変は、本来が腸の細胞で働く「CDX1」というタンパク質(転写因子)が、ピロリ菌によって胃粘膜で出現し、腸の上皮組織の変質(化生)を引き起こしたためと考えられるが、CDX1がどのようなメカニズムで胃の細胞を腸の細胞に変換するのか分からなかった。

研究グループは、1本鎖DNAに検体を反応させて塩基配列を特定する「DNAマイクロアレイ解析」技術を用いて、CDX1が働きを制御している遺伝子群をヒトの全遺伝子の中から探した。その結果、CDX1は、iPS細胞や胚性幹(ES)細胞の樹立・維持に関与する「SALL4」と「KLF5」というリプログラミング遺伝子を、胃の細胞で異常に活性化していた。CDX1を発現した胃の細胞では、腸の幹細胞や腸の分化した細胞に見られる遺伝子群の発現が観察された。これらのことから、胃の細胞は未分化状態の幹細胞に一度リセットされ、その後、腸の細胞へと異常分化していくことが示されたという。

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