コラム - オピニオン -

若手アカデミー活動の希望と課題

東北大学大学院 情報科学研究科 准教授、日本学術会議 若手アカデミー委員会委員 住井英二郎 氏

掲載日:2013年2月12日

東北大学大学院 情報科学研究科 准教授、日本学術会議 若手アカデミー委員会委員 住井英二郎 氏

住井英二郎 氏

 

日本学術会議 若手アカデミー委員会(http://www.youngacademy-japan.org/http://www.scj.go.jp/ja/member/iinkai/wakateacademy/)は、2000年ごろから主に欧州で始まった若手アカデミー活動に 呼応し、日本での若手アカデミー設立を目指して学術会議内に設けられた委員会である。現在の委員は自薦・他薦による若手アカデミー委員会専属の特任連携会 員と、通常の学術会議連携会員の若手希望者、およびアドバイザー的シニアメンバーを合わせた32人である。2009年7月発足の活動検討分科会から合わ せ、すでに3年半にわたり多くの活動を行ってきた。それらの活動は上述ホームページにおいてもごく簡潔にまとめられているが、大きく2つの方向に分けられ るだろう。

1つは「科学技術フェスタ in 京都2011」において行った公開シンポジウム「若手研究者たちと考える、君たちの、そして日本の未来」に代表される、分野や年代を超えた学際的・コミュニティ横断的活動である。このシンポジウムについては「学術の動向」2012年9月号(無料閲覧可能)で詳しく報告されている。

それ以前にも、サイエンスアゴラ2010シンポジウム「新しい科学技術政策と若手研究者の役割」や、日本学術会議公開シンポジウム「若手研究者の考える、震災後の未来-学術に何ができるのか-PDF、さらにより最近では、同じく日本学術会議公開シンポジウム「『心の時代』と学術-若手研究者とともに考える社会の不安と喜び-」と、「学術と未来想像 人は未来の社会を展望できるのかPDFを企画・開催した。

もう1つの方向は、総合科学技術会議などをはじめとする、科学技術政策議論の場への参加である。これまでに若手アカデミー委員会委員は、総合科学技術会議 基礎研究及び人材育成部会、同 復興・再生戦略協議会グリーンイノベーション戦略協議会ライフイノベーション戦略協議会、大臣・有識者会合における労働契約法改正案に関する議論および関連委員会、大臣や国会議員との懇談会など、複数の参加機会を得ている。

このような活動はいずれも、従来は主に地位も年齢も高い先生方の領分であったと思われる。そのような場に若手研究者が参加することは、いわゆる「若手研究 者問題」はもちろん、一般に研究・高等教育の最前線にいる当事者の生の声を発信・反映するという点で、有意義であることは疑いの余地がない。例えば総合科 学技術会議などにおける議論は、高所からの見方は勉強になることも多いが、現場の研究者の実感からかけ離れていることも少なくなく、若手委員の訴えはしば しば驚きを与えるという。

一方、現代の研究者はとにかく多忙である。特に若手研究者は育児・家事をはじめとする日々の生活にも追われ、平均3時間睡眠などという話も珍しくない(男 性の私ですらそうなのだから、ましてや女性研究者の苦労は想像を絶する)。そのような中でシンポジウム企画・開催や政策議論参加の負担は大きく、結果とし て十分な広報や意見などができないケースもままあるように見受けられる。何よりも、自分自身の研究・高等教育に支障をきたしては本末転倒である。

これらの矛盾を打破するには、政策を決定する立場にある方々と現場の若手研究者とが、聞こえの良い作文や見栄えの良い図、あるいは都合の良い数字だけにと どまらない深いコミュニケーションの機会を得ること、また若手研究者の側も一部の「野心家」だけでなく多くの者が、たとえ少しずつであっても当事者意識と 責任を持って建設的議論に参加することが今後の課題だろう。

若手アカデミー委員会では、学協会「若手の会」代表の方などに、国内若手研究者ネットワークへのご登録・ご参加を呼びかけている(http://www.youngacademy-japan.org/network)。皆様のご協力をお願い申し上げたい。(リンク先は委員会による公式の呼びかけであるが、本記事の内容は個人の意見であり、委員会ないし学術会議を代表するものではない)

 

東北大学大学院 情報科学研究科 准教授、日本学術会議 若手アカデミー委員会委員 住井英二郎 氏
住井英二郎 氏
(すみい えいじろう)

住井英二郎(すみい えいじろう)氏のプロフィール
東京都生まれ。筑波大学附属駒場高校卒。1998年東京大学理学部情報科学科卒、2004年東京大学大学院博士(情報理工学)取得。2000年日本学術振興会特別研究員、同年ペンシルバニア大学客員研究員、01年東京大学大学院助手、03年ペンシルバニア大学リサーチアソシエイト、05年東北大学大学院情報科学研究科助教授、2007年から同准教授。日本学術振興会賞、日本IBM科学賞、未踏ソフトウェア創造事業スーパークリエータなど受賞。研究分野は理論計算機科学、特にプログラミング言語理論。

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