自分以外の植物から水や養分を奪う寄生植物が、同種や近縁の植物には寄生しない「自己回避」の仕組みを解明したと、奈良先端科学技術大学院大学などの研究グループが発表した。寄生植物に取り付かれた植物(宿主植物)は、思うように成長できなくなる。研究グループは、今回の研究成果をもとに農作物への寄生を抑える技術を開発し、農業被害の軽減につなげたいとしている。
寄生植物が自己回避をすることは知られていたが、その仕組みは謎だった。奈良先端大の吉田聡子教授、峠隆之教授、理化学研究所環境資源科学研究センターの白須賢副センター長、京都大学生存圏研究所の飛松裕基教授らでつくる研究グループは、モデル植物として研究が進む寄生植物コシオガマを用いて自己回避の仕組みを調べた。

寄生植物は「吸器(きゅうき)」という特殊な器官を宿主植物の維管束に侵入させ、水分や養分を奪う。吸器は宿主植物の根などが分泌する吸器誘導物質(HIFs)によって形成されるが、通常、寄生植物自身や近縁の寄生植物のHIFsでは吸器が形成されないために自己回避が起きる。研究グループは、自分自身のHIFsに反応して吸器を形成するコシオガマの突然変異体を調べた結果、HIFsと糖を結びつける特殊な酵素「UGT72B1」が壊れていることを発見した。
寄生植物のUGT72B1は宿主植物のUGT72B1よりも幅広い種類のHIFsに糖をつけることができ、糖がついたHIFsは吸器を形成する能力を失うことを突き止めた。この仕組みにより、寄生植物が自己回避しているという。

寄生植物はアフリカや欧州など世界で年間10億ドル以上の農業被害をもたらしている。吉田教授は「今回の研究成果は寄生植物が自己と他者を分子レベルで識別する仕組みの理解につながり、宿主植物は自らの仲間だ、と寄生植物に錯覚させることで寄生を抑える新たな技術を開発できる可能性がある」と述べている。
研究成果は10月23日付の米科学誌サイエンスに掲載された。

関連リンク
- 奈良先端科学技術大学院大学プレスリリース「寄生植物は自分の仲間をなぜ襲わない? ~「自己回避」の仕組みを世界で初めて解明~ 寄生雑草の新たな防除戦略に期待」

