岐阜県飛騨市の山中の地下600メートルに、直径69メートル、高さ94メートルの巨大な円柱形の空洞ができた。次世代の素粒子観測装置「ハイパーカミオカンデ」を設置するための空間だ。宇宙や物質の成り立ちを解き明かそうと、東京大学と高エネルギー加速器研究機構の主導する国際チームが2028年から観測を始めることにしている。
ハイパーカミオカンデは、超新星爆発から来た素粒子ニュートリノの世界初観測で故・小柴昌俊氏のノーベル物理学賞受賞(2002年)につながったカミオカンデ(1983~1996年)、ニュートリノが質量を持つことを示すニュートリノ振動の発見で梶田隆章氏のノーベル物理学賞受賞(2015年)につながったスーパーカミオカンデ(1996年~現在)に続く三代目の素粒子観測装置だ。
2021年5月から空洞の建設位置に向けてトンネルを掘り進め、まず天井部分のドームを掘削した後、2023年10月以降、円筒部分を掘り下げていった。掘削にともなって出る岩や土などを、中心部の立杭を通じて排出しながら作業を進めた。7月31日に掘削を終えてできあがった空洞は約33万立方メートルもあり、岩盤の中につくられた人工の空洞としては世界最大級だという。
この地下空洞に円筒形の超大型水槽を設置し、壁に大きさ50センチの超高感度光センサーを2万個以上取り付けた後、26万トンの超純水で満たすとハイパーカミオカンデが完成する。実質的にデータを取ることができる有効体積は、スーパーカミオカンデの約8倍もある。水の中に現れるリング状の弱い光「チェレンコフ光」を観測することで、素粒子ニュートリノの性質を解明したり、ノーベル賞級ともいわれる「陽子崩壊」の発見に挑んだりして、宇宙や物質の成り立ちをひもとく計画だ。
関連リンク
- 東京大学プレスリリース「ハイパーカミオカンデ計画:超巨大空洞の掘削を完了」
- ハイパーカミオカンデ概要
- ハイパーカミオカンデ空洞掘削