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古川さんISSから帰還、多数の実験こなし「宇宙をもっと身近に」

2024.03.13

 国際宇宙ステーション(ISS)で6カ月半の滞在を終えた古川聡さん(59)ら4人の飛行士を乗せた米スペースX社の宇宙船「クルードラゴン」が日本時間12日午後、米フロリダ州ペンサコーラ沖に着水し、地上に無事帰還した。古川さんは滞在中、今後の国際月探査を視野に入れたものを含め、各種の実験を精力的にこなした。

無事に帰還し、船外に運び出される古川さん(NASAテレビから)
無事に帰還し、船外に運び出される古川さん(NASAテレビから)

 古川さんはISSに滞在を続ける飛行士らと別れを惜しんだ後、米国、ロシア、デンマークの3人とクルードラゴンに搭乗。12日午前零時20分、高度約400キロにあるISSから離脱した。徐々に降下して大気圏に突入。パラシュートを開いて午後6時47分頃に着水した。クルードラゴンは再利用可能。古川さんらが乗った7号機の機体は「エンデュアランス(耐久、忍耐)」と命名されており、3、5号機に続く3回目の運用を無事に終えた。

 古川さんはISS離脱前の10日午後、X(旧ツイッター)に「私自身にも孫がいますが、その世代が成長する頃には宇宙がもっと身近になっているはずです。私のISS長期滞在ミッションはその準備でもありました」と投稿し、活動を振り返った。

古川さんらが乗ったクルードラゴン。ISS離脱直前(左)と着水時の様子(いずれもNASAテレビから)
古川さんらが乗ったクルードラゴン。ISS離脱直前(左)と着水時の様子(いずれもNASAテレビから)

 12年ぶり2回目の飛行となった古川さんは昨年8月26日に地球を出発しており、今回の宇宙飛行は199日に及んだ。通算では366日となり、若田光一さん(60)の504日に次ぎ日本人2番目の長さとなった。

 ISS滞在中は日本実験棟「きぼう」などで活動し、次世代水再生システムの実証、微小重力での固体材料の燃え方を調べる実験の関連作業、撮影ロボットの実証、細胞が重力を感じる仕組みを探る実験、微小重力で臓器を作ることを目指す実験の関連作業、超小型衛星の放出などを進めた。各国の若者が参加した宇宙実験、ロボットプログラミング競技会など、次世代育成にも取り組んだ。

物体を船外に曝露(ばくろ)する実験の作業を進める古川さん=昨年9月(NASA提供)
物体を船外に曝露(ばくろ)する実験の作業を進める古川さん=昨年9月(NASA提供)

 古川さんは1964年、神奈川県生まれ。博士(医学)。少年時代、人気特撮作品「ウルトラセブン」に憧れ宇宙に関心を持った。消化器外科の臨床及び研究への従事を経て、99年に山崎直子さん(53)=2011年にJAXA退職、星出彰彦さん(55)と共に飛行士候補に選ばれた。11年にISSに5カ月半滞在した。地上ではJAXAの宇宙医学生物学研究グループ長を歴任するなど、宇宙医学研究を推進してきた。

 自身の身体の変化にも強い関心を示し、2月にはXに「興味深いのは、飛行前に比べ宇宙で増えているのではと予想していた胸囲が4~5センチ減っていたことです。微小重力による体液シフトにて脳への血流が増えたことで、身体が体液過剰とみなし、尿などで体液を減らし微小重力環境に適応した結果なのかもしれません」などと、考察とともに投稿している。

 日本人のISS長期滞在は12回目だった。油井亀美也(ゆい・きみや)さん(54)、大西卓哉さん(48)がそれぞれ、来年にも長期滞在することが決まっている。

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