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「月面見据え、船外活動やりたい」大西さん再来年、2度目のISS長期滞在

2023.11.17

 宇宙飛行士の大西卓哉さん(47)が2025年頃、国際宇宙ステーション(ISS)に長期滞在する、と宇宙航空研究開発機構(JAXA)が発表した。日本人の長期滞在決定は14回目。2016年以来、自身2度目の飛行となる。全日空パイロット出身の大西さんは会見で「進化を遂げたISSのミッション(任務)にしっかり対応できるよう、準備したい」と思いを語った。将来担いうる月面着陸に必要な技能を磨く機会として、ISSの船外活動に意欲をみせた。

会見する大西卓哉さん=日本時間15日、米テキサス州ヒューストン(オンライン取材画面から)
会見する大西卓哉さん=日本時間15日、米テキサス州ヒューストン(オンライン取材画面から)

 来年を予定していた油井亀美也(ゆい・きみや)さん(53)の長期滞在も、同じ2025年頃へと延期された。JAXAによると、国際間で調整している飛行計画が変更となったため。油井さんと大西さんのいずれが先に滞在するかは未定という。2人は同時の長期滞在とはならないものの、交代時に短期間、居合わせる可能性がある。今月14日に発表した。

 大西さんはISSに半年間滞在し、米国などの飛行士と連携してISSを運用し、日本実験棟「きぼう」を利用した科学実験などを行う。地上との往復で搭乗する宇宙船は未定だが、米民間機「クルードラゴン」を想定して訓練を受ける。日本人では現在、古川聡さん(59)が8月から長期滞在をしている。

 日本時間今月15日、大西さんは米テキサス州ヒューストンからオンラインの会見に臨んだ。有人宇宙開発の展望について「ISSから、今後誕生するであろう商業宇宙ステーション、(月や火星など)外に広がる宇宙探査へと拡大する」との認識を示した。「一人一人の飛行士が積み上げる小さな実績が、大きな時代の変化を生む。ISSは地上の生活を改善すると同時に、(月や火星の)探査につながるテストベッド(技術実証環境)としての役割もある。貢献したい」と意気込んだ。

国際宇宙ステーション(NASA提供)
国際宇宙ステーション(NASA提供)

 米国は国際協力による「アルテミス計画」で月上空の基地の構築や、アポロ以来の有人月面着陸を計画。日本も参加し、2020年代後半に米国人以外で初の着陸を目指している。大西さんは「子供の頃から月面着陸に憧れている。自分も機会があれば狙いたい」と明かした。実現のための取り組みを問われると「月面で求められるスキルは、大きくはISSと変わらないものの、地質学の知識や(月面活動に固有の)個々の技術があると思う。月面を見据え今回ISSで成し遂げたいのは、前回できなかった船外活動。月面では必須のスキルだ。役割が与えられるよう、しっかり訓練したい」と話した。

前回のISS滞在中、欧州の医学系実験の作業をする大西さん=2016年10月(JAXA、NASA提供)
前回のISS滞在中、欧州の医学系実験の作業をする大西さん=2016年10月(JAXA、NASA提供)

 今年2月に飛行士候補者となった諏訪理(まこと)さん(46)と米田(よねだ)あゆさん(28)を「自分を先輩と言うのがおこがましいくらい、非常に優秀」と評価。その上で「自分は前回のISS滞在で、米国の大先輩飛行士からいろいろ勉強した。だから、得た知見は国籍を問わず(新人2人に限らず)継承していきたい」とした。

 2025年に開かれる大阪・関西万博での、ISSの関連行事などは未定。ただ大西さんは「ISSでどんなことをしているのか、宇宙空間がどんな世界か、ご紹介できる機会になれば」と自身の希望を語った。

 大西さんは1975年、東京都生まれ。98年、東京大学工学部航空宇宙工学科卒業、全日空入社。副操縦士を経て2009年、JAXAの飛行士候補者に選ばれた。11年、飛行士に認定。16年7~10月にISSに約4カ月滞在し、米民間物資補給機「シグナス」6号機をロボットアームで捕捉する作業や船外活動の支援、きぼうの装置の充実に関する作業、多数の実験などを行った。20年、きぼうの運用管制を行うJAXAのフライトディレクタに認定された。

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