ニュース

筋肉で動く二足歩行ロボット ピボットターンで小回りきく 東大などが開発

2024.02.20

 培養骨格筋組織の収縮で動く二足歩行ロボットを東京大学大学院情報理工学系研究科知能機械情報学専攻の竹内昌治教授(機械工学)らが開発した。世界初という。バスケットボールで見られる軸足を支点にして回る「ピボットターン」を行い、ロボットの大きさの2分の1の回転半径で方向転換できる。筋組織を駆動源とするロボットの開発やヒトの歩行メカニズムの理解につながるとしている。

 生体由来の材料と機械部品を融合してつくるロボットは「バイオハイブリッドロボット」と呼ばれる。ロボットの駆動源として筋組織を用いたものの研究が進んでおり、芋虫のようにはって動くものや魚のようにひれを使って泳ぐものが海外で発表されているが、方向転換中も前進をやめられないため、小回りで旋回するのは難しかった。

 竹内教授らはヒューマノイド研究の一環で、細やかな旋回動作ができるバイオハイブリッドの二足歩行ロボットの製作を企画した。3Dプリンターでつくったプラスチックにシリコーン系材料製の柔軟な基板と培養した骨格筋組織を取り付けた。電気刺激で筋組織を収縮させると足が屈曲し、二足歩行する仕組み。片方の足を軸足にして固定し、もう片方の駆動足だけに電気刺激を与えることで旋回する。

二足歩行ロボット。足の長さ約2センチ、幅約1センチ。培養液中で浮きとおもりを使って直立姿勢を維持する。透明で柔軟な基板の前にある白く引っ張られて見える筋組織が駆動源となる(竹内昌治東大教授提供)
二足歩行ロボット。足の長さ約2センチ、幅約1センチ。培養液中で浮きとおもりを使って直立姿勢を維持する。透明で柔軟な基板の前にある白く引っ張られて見える筋組織が駆動源となる(竹内昌治東大教授提供)

 方向転換の小回りについては、従来の前進を止められないロボットでは回転半径に対するロボット長の割合で示される「回旋率」は0.4で、ロボットの大きさより大きい円を描いて方向転換していた。一方、今回の二足歩行ロボットでは回旋率は2.1。そろえた二足の幅約1センチに対して5ミリ程度の半径の円を描いて方向転換できていた。

二足歩行ロボットの旋回運動。上から見ると、左の写真から右の写真にかけて約90度右に旋回した(竹内昌治東大教授提供)
二足歩行ロボットの旋回運動。上から見ると、左の写真から右の写真にかけて約90度右に旋回した(竹内昌治東大教授提供)

 今後について、竹内教授は「筋肉の出力は断面積に比例するのでもっと大きな力を生み出すには太い筋肉が必要だが、中まで養分を行き届かせる技術などがまだ確立できていない。研究室で行っている培養肉で厚い肉をつくる知見も組み合わせて、二足歩行ロボットを改善したい」と話している。

 研究は早稲田大学と共同で行い、1月26日付けで米科学誌「マター」電子版に掲載された。3月号の表紙となる。

関連記事

ページトップへ