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黒トリュフの人工発生に成功、白トリュフ含め安定した栽培技術開発へ 森林総研など

2023.12.19

 西洋料理の高級食材とされる国産の黒トリュフを人工的に発生させることに森林研究・整備機構森林総合研究所などのグループが成功した。昨年には白トリュフの人工発生も確認しており、今後は白黒両方のトリュフが安定的に育つ条件を探り、栽培技術開発を進めていくという。

 トリュフの和名はセイヨウショウロ。マツタケと同様、生きた樹木の根に共生して増殖する菌根菌から発生するキノコの仲間だ。国内には20種以上が自生しており、食材として期待できる種もあることから、森林総研の山中高史東北支所長(微生物生態学)らは、トリュフの生育に適した樹種や土壌環境を解明し、国産種のトリュフを発生させる取り組みを2015年ごろから始めた。

菌根菌であるトリュフと樹木の共生の仕組み。トリュフは樹木から糖など光合成産物をもらう一方、土壌中から集めた養水分を樹木に供給するとみられる(森林総研提供)
菌根菌であるトリュフと樹木の共生の仕組み。トリュフは樹木から糖など光合成産物をもらう一方、土壌中から集めた養水分を樹木に供給するとみられる(森林総研提供)

 人工発生の研究材料として選んだのは、黒トリュフのアジアクロセイヨウショウロと、白トリュフのホンセイヨウショウロ。前者は北海道から九州にかけて、後者は東北から中国地方で自然発生が確認されている。国内で広く人工発生させることができる可能性が高いと山中支所長らは考えた。

 トリュフはシイタケやエノキ、ナメコなど、丸太やおがくずに植えた菌が栄養をとってキノコが発生するのとは違い、共生する樹木と菌根菌の相互作用でキノコができる。菌だけでなく樹木の管理も必要となり人工発生が難しいとされる。

 研究では、国内で盛んなマツタケの人工栽培実験の知見を生かし、キノコをすりつぶした液などを使って菌をコナラの根につけた。

 黒トリュフについては、2016年4月と7月に岐阜県内の試験地に菌を付けたコナラの苗を植えたのをはじめ、茨城県や京都府など計4カ所に苗を植えた。毎年秋を中心にキノコの発生がないか確認をしていたところ、7年目の今年10月に、岐阜の試験地で地表面に球形の黒いキノコ2個、計約50グラムが発生しているのが確認できた。遺伝子を調べ、元々土壌にあった菌などではなく、コナラ苗木に接種したトリュフ菌からできたキノコだと特定した。

岐阜県内の試験地で2023年10月に人工発生していた黒トリュフ(森林総研提供)
岐阜県内の試験地で2023年10月に人工発生していた黒トリュフ(森林総研提供)

 白トリュフについては、2017年10月茨城県、19年4月に京都府など4カ所に苗を植え、茨城県と京都府の試験地で22年11月にキノコができた。茨城県では約6年、京都府では約3年7ヶ月で人工発生したことになる。

京都府内の試験地で2022年11月に人工発生が確認された白トリュフ(森林総研提供)
京都府内の試験地で2022年11月に人工発生が確認された白トリュフ(森林総研提供)

 山中支所長によると、黒と白のトリュフでは、育ちやすい土壌の酸性度が異なるとみられる。黒トリュフの方がアルカリ土壌を好むようで、苗木を植える前などに石灰をまくなどの処理をしたという。一方、温度や水分量については、黒か白のトリュフができた試験地間、あるいはキノコができた試験地とできなかった試験地の間に明らかな差異は認められていない。

 今後は同じ場所でキノコ発生が毎年続くのかを確認しながら、安定的に発生させる技術開発を進める。「実験室で水分量や温度などを管理するだけでは、マツタケと同じようにトリュフもキノコをつくらない。マツタケが地上に現れるには落ち葉かきや雑木を切るなど松林の管理が鍵となっているように、トリュフでも試験地の周りの土地利用なども含め、キノコができる条件を明らかにしていきたい」と山中支所長は話している。

 黒トリュフの研究成果は12月4日、岐阜県森林研究所と森林総研がプレスリリースで発表した。

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