週末の就寝・起床時間を平日よりそれぞれ2~3時間遅らせると、週明け月曜日の朝に血圧上昇と動脈硬化を招くとの研究結果を早稲田大学などが発表した。心血管疾患は一般に月曜の朝に起こりやすいとされる。週末は夜更かしや朝寝坊をしがちな人も多いとみられるが、研究チームは「平日と同じリズムを保つことが大切」と警告している。
研究は早稲田大学スポーツ科学学術院の谷澤薫平准教授(運動生理・生化学)らのグループが行った。谷澤准教授らは、通常平日も休日も同じリズムで生活している主に20代の男性20人を対象に、4週にわたって研究を実施。規則正しい普段通りの生活の週と、金曜日の夜から日曜日の朝にかけて、平日より2~3時間遅く就寝・起床する「社会的時差ボケ」の状態にした後、日曜日の夜から月曜日の朝までは通常と同じ生活リズムに戻す週を交互に体験してもらい、両者の血圧・動脈硬化度を比較した。
参加した被験者には基礎疾患はなく、強い運動負荷やストレスをかける週末を送った人はいないように調整した。さらに、実験は普段の生活どおりの睡眠がとれるよう各自宅で行い、隔離した状態での観察研究にはしなかった。
血圧測定は通常の健康診断で用いられるような血圧計を用いた。動脈硬化の測定には、血管が硬いほど脈が速く伝わることを利用したPWV(Pulse Wave Velocity 脈波伝播速度)の検査機器を使った。
その結果、月曜日の朝、通常通りのグループではほとんど血圧に変化が無かったのに対し、社会的時差ボケのグループでは通常の金曜日の朝に比べて最高血圧が13mmHgほど高くなっていた。具体的には、起床後の値の平均をみると、金曜日には117mmHgだったが、月曜日には130mmHgと、いわゆる「血圧が高め」と呼ばれる域に達していた。通常通りのグループでは金曜日が122mmHgで、月曜日も121mmHgとほぼ変わらなかった。
社会的時差ボケのグループでは同時に動脈硬化の度合いも強くなっていた。動脈の硬さや詰まりを測定し割り出す「血管年齢」でいうと、平均して実年齢を10歳程度上回っていた。谷澤准教授は「たった1回数時間とはいえ、自分の体の体内時間と環境が少しずれるだけでも、交感神経が活性化して、動脈が硬くなって血圧が上がったのではないか」と話している。社会的時差ボケを体験した被験者からは「体がきつかった」という感想も聞かれたという。
夜勤や旅行といった昼夜逆転するほど長時間の「時差ボケ」の体への影響に関する研究はこれまでも行われてきたが、短時間だけ睡眠時間がずれる一過性の社会的時差ボケに関する研究は例がないという。
一般的に心血管疾患は月曜日の発生が多いとされている。谷澤准教授は「食生活や運動などいろんな要素が考えられ、一つの原因と断定はできないが、多くの要素のうちの一つに社会的時差ボケもあるのではないか」と話した。そのうえで、「休日だからといって睡眠の時刻を変えるのではなく、通常通り過ごすことは健康維持・増進につながると思われる」とした。
研究は日本学術振興会の科学研究費助成事業を受けて行われ、日本高血圧学会の「ハイパーテンション・リサーチ」電子版に7月14日に掲載され、早大が同21日に発表した。
関連リンク
- 早稲田大学プレスリリース「「社会的時差ボケ」が血管を硬くし、早朝の血圧を増大させる原因に」