高齢者が高血圧になるリスクを高めるタンパク質を特定した、と自然科学研究機構生理学研究所(愛知県岡崎市)の西村明幸(にしむら あきゆき)特任助教、西田基宏(にしだ もとひろ)教授と九州大学、香川大学などの研究チームが20日、発表した。新たな高血圧治療につながる、と期待される。研究成果は米科学誌に掲載された。
研究チームは、「アンジオテンシンⅡ」と呼ばれ、血圧調整に重要な働きをする生理活性物質(ペプチド)に着目した。アンジオテンシンⅡは「AT1R」と呼ばれるタンパク質に作用して血圧を上げる。研究チームは今回、このAT1Rが、加齢に伴って増える別のタンパク質「P2Y6R」と複合体をつくり、アンジオテンシンⅡによる血圧上昇を促進していることを明らかにした。
マウスの実験で、P2Y6Rが働かなくなったマウスは、正常マウスより高血圧になりにくかった。このため、高齢になるほど増えるP2Y6Rが、高齢者高血圧のリスク要因として血圧上昇のカギを握っていることが分かった、という。
研究チームによると、現在高齢者の二人に一人は高血圧で、脳卒中や心臓病などの循環器病を引き起こす最大の要因。AT1RとP2Y6Rという二つのタンパク質の複合体の形成を抑えることなどにより、新しいタイプの降圧剤を開発できる可能性があるという。
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- 生理学研究所プレスリリース「加齢高血圧リスクを高める受容体を特定ー心血管病の予防・治療に期待ー」