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世界トップ目指す国際卓越研究大学、東北大が候補に 認定は条件付き

2023.09.01

 10兆円規模のファンド(基金)の運用益により支援を受ける「国際卓越研究大学」について、文部科学省は1日、東北大学を候補に選定したと発表した。一定の条件を満たした場合に認定するとの留保をつけた。世界トップの研究水準実現の潜在力を持つ大学を選ぶ狙いで、同大は今後、体制強化計画の磨き上げや合議制の意思決定機関の設置などの準備を進め、正式認定を目指す。認定後、来年度中に助成を開始する。

東北大学(同大提供)
東北大学(同大提供)

 海外のトップレベルの大学が近年、豊富な資金を背景に研究力を高めているのに対し、国内では論文の質や量などの低下が指摘されている。こうした中、政府は、大学には世界トップクラスの研究者の獲得、若手研究者の育成、研究者の研究時間確保のための負担軽減などが求められるとして、ファンドを創設。卓越大学を3月末まで公募し国立8校、私立2校が申請した。海外を含む識者や企業人の10人がアドバイザリーボード(有識者会議)の構成員として審査を行っている。

 永岡桂子文科相は1日の閣議後会見で「東北大の状況について、有識者会議で継続的に確認していきたい。10大学から意欲的な提案があった。多様で重みのある研究大学群の形成に向けて対話を継続するとともに、各種事業や規制緩和を通じて各大学の挑戦を後押ししていきたい」と述べた。

国際卓越研究大学の候補に選ばれ会見する東北大学の大野英男総長=1日、仙台市青葉区の同大(オンライン画面から)

 会見した東北大の大野英男総長は「大変光栄に思うとともに、身が引き締まる思いだ。比較的フラットな構造で優秀な人たちが沢山集まり、卓越した研究をする。独自に考えながら自らの方向性を選ぶ。そういう研究大学を目指すべきだ。私たちの思いが有識者会議に届いたのではと、心強く思っている」と述べた。大野氏自身、磁気を使う半導体技術「スピントロニクス」の研究分野を開拓し、ノーベル賞候補者に挙げられている。

 審査は(1)国際的に卓越した研究成果を創出できる研究力、(2)実効性が高く、意欲的な事業・財務戦略、(3)自律と責任のあるガバナンス(統治)体制の観点から実施。他の論文に多く引用される優れた論文の数や、企業などからの研究資金の受け入れ実績、新たな学問分野や融合領域に迅速に対応しているかなどが具体的な基準。大学の実績だけではなく、世界最高水準の研究大学の実現に向けた変革へのビジョンやコミットメント(約束、誓約)の提示に基づくという。

 東北大の申請について、有識者会議は「KPI(重要業績評価指標)やマイルストーン(到達の中間目標)を明確にした体系的な計画」「新たな研究体制の確立に向け明確な戦略が示されている」「改革の理念が組織に浸透している」などと評価。一方で「民間企業などからの研究資金等受け入れ額を10倍以上にする目標は、従来の成長モデルの延長線上では達成困難」「海外からの研究者や学生の受け入れ態勢は構築途上」などと指摘している。

 卓越大の認定に向け「人文・社会科学系も含めた全学の研究力向上の道筋」「全方位の国際化」「活力ある新たな研究体制の確立」「大学院変革・研究大学にふさわしい学部変革」「財務戦略の高度化、産学共創による収益の拡大方策」「体制強化計画の実施が継続されるガバナンス体制の構築」の6項目について、精査し明確化することを条件とした。

 申請は早稲田大、東京科学大(=仮称、東京工業大と東京医科歯科大が来年度をめどに統合)、名古屋大、京都大、東京大、東京理科大、筑波大、九州大、東北大、大阪大が行った。有識者会議は「各大学が多大な労力を費やして申請した意欲や挑戦を後押しするため」として、申請の概要や、それらに対する個別の意見を公表した。

 ファンドは科学技術振興機構(JST)が昨年3月に運用を開始している。運用益の年最大計3000億円を助成し、日本の研究力強化を図る。

 岸田文雄首相は2021年10月の臨時国会の所信表明演説で、成長戦略の第一の柱が科学技術立国の実現だとした上でファンド創設を言明しており、政府の成長戦略の中の重要政策となっている。地域の中核大学や特定分野に強い大学を強化する「地域中核・特色ある研究大学総合振興パッケージ」などと連携した施策として進めている。

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