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感染症対応の司令塔「統括庁」9月1日発足 危機管理監に栗生氏、対策会議も一新

2023.08.29

 政府は感染症対応の司令塔となる「内閣感染症危機管理統括庁」を9月1日に発足させる。また同日付で「新型インフルエンザ等対策推進会議」のメンバーを一新する。厚生労働省も新型コロナウイルス感染症などの新興感染症対策を強化するために「感染症対策部」を同日付で新設する。加藤勝信厚労相は25日の閣議後会見で「新体制の下、新型コロナ対策に万全を尽くす」と述べた。

 厚労省関係者によると、統括庁は政府の感染症対策の政策立案や調整を一元的に担う。当初は60人程度の専従職員でスタートするが、コロナ禍のピーク時のような危機対応が必要な時は他省庁の兼務者を合わせて最大300人規模になるという。統括庁の長は「内閣感染症危機管理監」で、栗生(くりゅう)俊一官房副長官が就任する。統括庁発足に合わせて内閣官房の新型コロナウイルス等感染症対策推進室は廃止される。

栗生俊一氏(首相官邸提供)
栗生俊一氏(首相官邸提供)

 一連の新型コロナ対策を検証した政府の有識者会議は2022年6月、2009年の新型インフルエンザ流行後の対応が不十分で病床確保など保健、医療体制の構築に時間がかかり、医療の逼迫(ひっぱく)を招いた、などと指摘する報告書をまとめた。この中で政府や自治体が一体となって効果的な対策を推進するため、感染症対策を一元的に指揮する司令塔組織の整備や、米疾病対策センター(CDC)のように政策判断に必要な科学的知見と根拠を提供する専門家組織の強化などを提言した。

 ほかにも日本学術会議や日本経済団体連合会(経団連)などからも同様の提言が出されたことを受け、政府は内閣感染症危機管理統括庁の新設や、日本版CDCと言える国立健康危機管理研究機構の設立を決めた。統括庁を設立するために新法は今年5月に成立した。

 健康危機管理研究機構は、国立感染症研究所と国立国際医療研究センターを統合し、基礎研究と臨床の2つの機能を併せ持つ。人材育成にも力を入れ、日本独自のワクチンや治療薬開発を加速させるための調整役も担う。今後厚労省などが中心になって設立準備を進め、25年度以降の設立を目指す。

米国ジョージア州アトランタにある米疾病対策センター(CDC)本部(CDC提供)
米国ジョージア州アトランタにある米疾病対策センター(CDC)本部(CDC提供)

 後藤茂之経済再生担当相は25日の閣議後会見で、政府の新型インフルエンザ等対策推進会議のメンバーを刷新する方針を明らかにした。それによると、会議議長を務めていた尾身茂氏や国立感染症研究所の脇田隆字所長らは退任。推進会議に設置されていた新型コロナ対策分科会や基本的対処方針分科会も廃止になる。新たな推進会議メンバーには国立成育医療研究センターの五十嵐隆理事長や、国立国際医療研究センターの大曲貴夫国際感染症センター長ら15人が就任し、後任の議長はメンバー同士の互選で決まるという。

 尾身氏は2020年の国内の感染拡大初期から3年半以上にわたり、政府や厚労省の対策関連組織で専門家の取りまとめ役として政府に感染防止対策をたびたび助言。記者会見などを通じて「3密」を避ける行動など、個人ごとの対策の大切さを訴えてきた。

尾身茂氏
尾身茂氏
五十嵐隆氏(国立成育医療研究センター提供)
五十嵐隆氏(国立成育医療研究センター提供)

 厚労省は25日、全国約5000の定点医療機関から14~20日に報告された新型コロナウイルスの感染者数は計8万6756人で、1医療機関当たり17.84人となり、感染症法上の位置付けが5類に変更された5月8日以降で最多となったと発表。感染拡大の「第9波」は依然続いている。

 同省によると、1医療機関当たりの感染者数が多かったのは、岐阜県の31.03人、岩手県の30.42人、秋田県の28.48人。東京都は10.96人で前週より0.59人増加した。全国の新たな入院者数は1万3135人で前週比1.04倍だった。世界に続き日本でもオミクロン株の新たな派生型「EG.5」が広まりつつあるものの、重症化するかどうかについてはよく分かっていないという。

新型コロナウイルス感染症の定点当たり報告数推移(5月71日以前はHER-SYSデータに基づく定点医療機関からの患者数)(厚労省提供)
新型コロナウイルス感染症の定点当たり報告数推移(5月71日以前はHER-SYSデータに基づく定点医療機関からの患者数)(厚労省提供)

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