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緊急地震速報に「長周期」予測を追加 高層ビル増加受け、気象庁が運用開始

2023.02.03

 気象庁は、大地震に伴って生じるゆっくりとした大きな揺れの「長周期地震動」の予測を緊急地震速報の発表基準に追加し、2月1日から新たな地震防災情報の運用を始めた。4段階ある同地震動の階級のうち、上から2番目の3以上が予測される地域が対象になる。高層ビルが増えたことから高層階にいる人などに注意を呼びかけ、身を守る行動に役立ててもらうのが狙いという。

 気象庁によると、これまで緊急地震速報は最大震度5弱以上の揺れが予想される地震について震度4以上が見込まれる地域に出していた。長周期地震動の階級基準は2013年に定めた。震度3以下の地震でも、長周期地震動が3以上では人が立つのが困難で、固定していない家具が大きく動いたり倒れたりする危険があるとされる。

 この新たな地震防災情報の運用に合わせ、地震発生後の約10分後には地震動の地域ごとの観測結果が気象庁のホームページで確認できるようになった。

長周期地震動の4つの階級ごとの予想される揺れの程度や被害(気象庁提供)
長周期地震動の4つの階級ごとの予想される揺れの程度や被害(気象庁提供)

 長周期地震動は揺れの周期が約2~20秒程度と長く、ゆっくりしているのが特徴で、規模の大きな地震が起きた際に生じる。周期の短い地震と比べて遠方まで伝わり、揺れの継続時間も長い。建物の揺れの周期が地震動の周期と近いほど共振しやすく、高層ビルでは高層階ほど大きく、長く揺れる。地震の推定規模や震源からの距離、地盤の状況などを計算式に当てはめて予測を出す。

 この地震動は、2003年の十勝沖地震で震源から約250キロも離れた北海道苫小牧市で、石油タンクが大きく揺れて火災が発生したことから注目されるようになった。2011年の東日本大震災が発生した時は、震源から約400キロ離れた東京都内の高層ビルが大きく揺れた。約700キロも離れた大阪市内の55階建ての高層ビルでは強い揺れが約10分間続き、防火扉や天井、床面などが損傷した。

 気象庁によると、階級を定める前の2000年までを振り返り、同年以降階級3以上の長周期地震動を伴ったと思われる地震は04年の新潟県中越地震、11年の東日本大震災、16年の熊本地震など計33回を数えるという。

東日本大震災の時の東京都内の同一ビル内の低層階(左、2階)と高層階(右、24階)の室内の様子(気象庁提供)
東日本大震災の時の東京都内の同一ビル内の低層階(左、2階)と高層階(右、24階)の室内の様子(気象庁提供)

 東日本大震災以降、都市部を中心に高層ビルの建設が急増した。また「今後30年以内の発生確率が70~80%」と予測される南海トラフ巨大地震では、長周期地震動でも大きな被害が出るとみられている。国土交通省や気象庁はこうした状況を踏まえ、新たな地震防災情報の運用を始めた。同庁地震火山部は「長周期地震動の階級基準による緊急地震速報が発表されても基本的に取るべき行動はこれまでの速報と変わらないので、あわてずに身の安全を守ってほしい」としている。

長周期地震動を分かりやすく説明する気象庁のリーフレットの表紙(上)と一部(下)(気象庁提供)
長周期地震動を分かりやすく説明する気象庁のリーフレットの表紙(上)と一部(下)(気象庁提供)

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