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ノーベル医学生理学賞、人類進化研究のペーボ氏 沖縄科技大兼務

2022.10.03

 スウェーデンのカロリンスカ研究所は3日、2022年のノーベル医学生理学賞を、絶滅したヒト族のゲノムや人類の進化に関する発見をした独マックス・プランク進化人類学研究所のスバンテ・ペーボ教授(67)に授与すると発表した。ペーボ氏はスウェーデン出身で、沖縄科学技術大学院大学の客員教授を兼務している。

 2018年の本庶佑氏以来となる、日本人の医学生理学賞受賞はならなかった。

ノーベル医学生理学賞の受賞が決まったスバンテ・ペーボ氏のイラスト(ニクラス・エルメヘード氏、ノーベル財団提供)
ノーベル医学生理学賞の受賞が決まったスバンテ・ペーボ氏のイラスト(ニクラス・エルメヘード氏、ノーベル財団提供)

 古人類学では人類の祖先の骨や歯の化石を基に、進化や分類が研究されてきた。これに対しペーボ氏はDNA配列の分析手法を開拓し、これを手がかりに現生人類の進化の核心に迫る多くの成果を挙げた。

 ペーボ氏は旧人に属する化石人類、ネアンデルタール人のミトコンドリアDNAに加え、独自の手法の改善により核DNAを高精度に解読し、現生人類であるホモ・サピエンスとのつながりの解明に道を開いた。ネアンデルタール人のDNA配列は現代のアフリカ人のものよりも、欧州人やアジア人のものに似ていることを発見。ネアンデルタール人がホモ・サピエンスと数千年にわたり共存し、交配していたことを示した。欧州、アジア人のDNAの1〜4%がネアンデルタール人から受け継がれているという。

 また2008年にシベリア南部の洞窟で見つかった4万年前の骨のDNA分析により、未知のヒト族「デニソワ人」を発見した。ネアンデルタール人などの免疫の仕組みが、現代人に影響していることも指摘している。

 絶滅生物や人類の祖先のDNA配列の分析技術を開発し、古ゲノム学を確立したことで、人類のルーツや進化の歴史をひも解いたことが評価された。2020年には「古代人ゲノム解読による古人類学への先駆的貢献」で日本国際賞を受賞した。

 賞金計1000万スウェーデン・クローナ(約1億3000万円)が贈られる。授賞式は12月10日にスウェーデンで、3年ぶりに受賞者を招いて開かれる。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大を受け居住国で表彰を受けた過去2年の受賞者も招かれる。

2020年日本国際賞受賞時のスバンテ・ペーボ氏(右)
2020年日本国際賞受賞時のスバンテ・ペーボ氏(右)

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