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赤ちゃん抱っこして5分歩くと泣きやむ、育児に活用可能 日伊研究グループ

2022.09.26

 泣いた赤ちゃんを抱っこして5分歩くと泣きやみ、半数が寝つくことを実験で示した。理化学研究所など日本とイタリアの研究グループが発表した。さらに5~8分抱いてからベッドに寝かせると、起きずに眠ってくれるという。育児のノウハウとして活用できそうだ。

抱っこして歩いて5分、さらに5~8分でベッドに寝かせてもスヤスヤ(理化学研究所提供)
抱っこして歩いて5分、さらに5~8分でベッドに寝かせてもスヤスヤ(理化学研究所提供)

 赤ちゃんを寝かしつける方法として、おんぶや抱っこ、ベビーカーでの散歩などがあるが、これらの効果の科学的な研究は少なかった。研究グループは2013年、親が抱いて歩くと赤ちゃんがおとなしくなると発表したが、20秒ほどの効果しか調べていなかった。これでは、親が歩くのをやめると赤ちゃんは再び泣き始めてしまった。

 そこで研究グループは、より長時間歩く効果などを、生後7カ月以下の赤ちゃんと母親の21組による実験で調べた。母子の国籍は日本やイタリアなど。まず、泣いている赤ちゃんに対し「抱っこして歩く」「抱っこして座る」「ベッドに置く」「乳母車に乗せて前後に動かす」をそれぞれ30秒行って、反応を調べた。その結果、赤ちゃんを泣きやませるには、親が歩いたり乳母車に乗せたりして、移動させることが効果的であると分かった。

 次に、泣いている赤ちゃんを抱いて5分歩いたところ、全員が泣きやみ、45.5%が眠った。その後1分以内にさらに18.2%が眠った。一方、元々泣いていない赤ちゃんを抱いて5分歩いても効果はなく、ほとんど眠らなかった。

泣いている赤ちゃんを抱いて5分歩いたところ、全員が泣きやみ、45.5%が眠った(理研提供)
泣いている赤ちゃんを抱いて5分歩いたところ、全員が泣きやみ、45.5%が眠った(理研提供)

 寝かしつける際に覚醒に向かってしまうタイミングを、心拍を基に調べた。背中がベッドに着く時ではなく、その前の、体が親から離れ始める時であることが分かった。また眠っている赤ちゃんは、親が歩く向きを変えたり、赤ちゃんに添えた手の位置を変えたりするだけで心拍が速くなった。

 眠っている赤ちゃんをベッドに置いた時、起きてしまったグループと眠り続けたグループを比べた。両者はベッドに置く前に眠っていた時間が違い、前者は平均3分、後者は同8分だった。

まず抱っこして5分歩き…(理研提供)
まず抱っこして5分歩き…(理研提供)

 一連の結果から、泣いている赤ちゃんを落ち着かせる方法の仮説を見いだした。まず抱っこして一定のペースで5分歩く。この時、急な方向転換や急停止をせず、揺らさず、淡々と歩くと、心拍が落ち着いて泣きやむ。その後、寝ついても抱いたまま座って5~8分ほど待つ。その上でベッドに置くと、赤ちゃんが起きず、さらに深く眠る可能性が高いという。

 研究グループは留意点として(1)歩く場所や抱き方など、安全性に注意すること、(2)赤ちゃんが泣くのには個人差が大きいが、全く泣きやまないなら中耳炎などの原因を疑ってみる必要があること、(3)この方法には即時的な効果があるものの、生活リズムや環境を整えるといった日常の育児法に代わるものではないこと――を挙げている。また母親だけでなく、父親や祖父母、育児経験のある他人が行っても効果に大差はないといい、今後詳しく検証するという。

 研究グループの理研脳神経科学研究センター親和性社会行動研究チームの黒田公美チームリーダーは会見で「さらに実験する必要がある。(赤ちゃんに取り付けた)スマートウオッチで心拍間隔を測って親のスマートフォンに送り、アプリが寝かしつけのアドバイスを表示する技術の動作原理の特許を出願している。育児を科学でサポートしたい」と述べている。

 研究グループは理研、伊トレント大学、上智大学、埼玉県立循環器・呼吸器病センター、同県立小児医療センターで構成。成果は米生物学誌「カレントバイオロジー」電子版に14日掲載された。研究は日本学術振興会科学研究費助成事業、科学技術振興機構(JST)社会技術研究開発事業の支援を受けた。

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