発疹が出るなど、根絶した天然痘に似た症状が現れるウイルス感染症「サル痘」の患者や疑い例の報告が欧州や北米を中心に相次いでいる。世界保健機関(WHO)は「(患者の増加は)極めて異常」とし、世界的な急拡大を警戒。24日現在、情報収集と分析を急ぎながら今後の対応を協議している。
日本国内での報告例は24日現在ないが、厚労省はサル痘ウイルスの国内流入を警戒している。また、WHOや欧米の関係機関から情報収集を続け、感染が疑われる患者が見つかった場合、速やかに報告するよう自治体に要請している。後藤茂之厚労相は同日午前の閣議後記者会見で「サル痘は4類感染症として全数、届け出の対象になっているが、国内ではまだ確認されていない。発生動向を監視し、必要な対応をとっていきたい」と述べた。
WHOは21日、サル痘の患者はこれまで継続的に報告されてきたアフリカ以外に、欧州と北米、オーストラリアの12カ国92人に拡大したと発表した。疑い例は28人という。患者報告は欧州で今月上旬から続いていた。今後も患者数や感染者発生国は増えるとみられる。
WHOや厚労省、国立感染症研究所などによると、サル痘は主にアフリカ西部や中部の熱帯雨林地帯で発生する動物由来の感染症。ネズミやリスの仲間がウイルスを保有し、サルやヒトにも感染する。発疹、発熱や体の痛みといった症状が出始め、顔や手足にぶつぶつとした膨らみができ、かさぶたになる。多くは2~4週間で治るが、子どもや免疫力が低下した人は重症になる。致死率ははっきりせず最大10%程度とされている。
1958年に実験動物のサルから発見されたことからサル痘の名前が付いた。新型コロナウイルスのような感染力はないとみられているが、対面で飛沫(ひまつ)を浴びたり、体液や症状の出た皮膚に触れたりすると、感染する可能性が指摘されている。
厚労省などによると、欧州ではアフリカへの渡航歴のない感染者が発生し、市中感染が起きている可能性があるという。国内で疑い例が報告された場合、検体は国立感染症研究所に送られて同研究所が確定診断する。
天然痘ワクチンには効果があるとして、2019年にサル痘向けとして承認されている。しかしWHOが1980年に天然痘根絶宣言をしたこともあり、簡単には入手できない状態だ。日本で同ワクチンは1970年代後半以降ほとんど接種されていない。
韓国からの報道によると、バイデン米大統領は来日前の22日、韓国で記者団に「誰もが心配すべきことだ。何をすべきか、使えるワクチンがあるとすれば何かを調べている。感染が広がったら大ごとになると懸念している」と述べている。
関連リンク
- 厚生労働省「サル痘への対応について」
- 厚生労働省「サル痘」
- 国立感染症研究所「サル痘とは」
- WHO「WHO working closely with countries responding to monkeypox」