コロナ禍を生きる人間の未来について考えるイベント「サイエンスアゴラin大阪」(大阪大学21世紀懐徳堂主催、科学技術振興機構=JST=など共催)が、大阪市中央公会堂(同市北区)で開催された。オンラインで中継し、各分野で活躍する論客が2025年大阪・関西万博を展望しながら、多様な価値観が生きる未来社会像をめぐって議論を深めた。
サイエンスアゴラは科学者と市民が対話する場として、JSTが2006年から毎年秋に開催している大規模イベント。趣旨を共有する大学などと連携して各地で関連行事を開催しており、10日に開かれた今回のイベントもその一つ。「Dialogue for Life コロナ禍を生きる私たちの未来に向けての対話」(Dialogue=ダイアログは「対話」の意味)をテーマとした。
「人間とは何か? 命の可能性を拡(ひろ)げる試み」と題した基調講演で大阪大学の石黒浩栄誉教授は、自身が開発を進めるアバター(人の分身として利用するロボットやCGなどのキャラクター)の技術や影響について解説。アバターの技術が発展すれば人々が多様な生き方をデザインでき、可能性に満ちた社会になると展望した。
石黒氏は大阪・関西万博の企画責任者の一人で、開催テーマ「いのち輝く未来社会のデザイン」を受けたコンセプトの一つ「いのちを拡(ひろ)げる」を担当する。「科学技術で進化する人間や、物理空間と仮想空間が共存する社会を表現し、未来を実感できる万博にしたい」と意気込んだ。
オンラインで加わった東京大学先端科学技術研究センターの熊谷晋一郎准教授をはじめ、登壇者ら6人がディスカッションを実施。熊谷氏は、社会がコロナ感染の危険にさらされ、誰もが助けを必要とする弱者になり得る状況になったことを指摘した。さらに、アバターが普及した未来の共感や助け合いのあり方、命と生活を守ること、人々の多様な価値観が生きる社会などをめぐり、活発に議論した。
大阪商工会議所の玉川弘子地域振興部長兼万博協力推進室長は、万博に向けて始めたプロジェクトを通じ、人とロボットが認識を共有する社会を目指すとアピール。「1970年の大阪万博の『動く歩道』のように、その後のレガシー(遺産)になるものを生み出したい」と述べた。
来月7~13日には「サイエンスアゴラin京都」が、京都里山SDGsラボ「ことす」(京都市右京区)とオンラインで開催される(京都大学主催、JSTなど共催)。
関連リンク
- 大阪大学「サイエンスアゴラin大阪 ラウンドテーブル『Dialogue for Life コロナ禍を生きる私たちの未来に向けての対話』」
- 科学技術振興機構「サイエンスアゴラ」
- 2025年日本国際博覧会協会「理念とテーマ事業の考え方」
- 京都大学「【開催決定!!】2022年3月7日(月)~13日(日)第5回京都大学“超”SDGsシンポジウム『持続可能性の自分ごと化』サイエンスアゴラin京都」