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日本国際賞に新型コロナのmRNAワクチン、気候変動研究の欧米3氏

2022.01.27

 国際科学技術財団(小宮山宏理事長)は2022年の日本国際賞に、mRNA(メッセンジャーRNA)ワクチン開発で先駆的研究を行い、新型コロナウイルス対策に貢献したドイツ・ビオンテック社のカタリン・カリコ上級副社長(67)と米ペンシルベニア大学のドリュー・ワイスマン教授(62)、世界的な生物圏の生産力の推計や気候変動科学に貢献した米スタンフォード大学ウッズ環境研究所のクリストファー・フィールド所長(68)の3氏を選んだと発表した。授賞式は4月13日に開催する。

2022年の日本国際賞に決まった(左から)カリコ氏、ワイスマン氏、フィールド氏(国際科学技術財団提供)

 カリコ氏とワイスマン氏は「物質・材料、生産」分野で授賞される。mRNAはDNAと同じ核酸の一種で、生体内でのタンパク質合成の設計図。1990年代に医療への応用が研究されたが、望まない免疫反応を起こすため断念された。両氏は2005年、mRNAを構成する物質の「ウリジン」を「シュードウリジン」に置き換えると、望まない免疫反応を抑制できることを発見。2008年には、これにより目的とするタンパク質の生産量が上がることも報告した。新型コロナワクチンは当初、開発に数年を要するとされたが、こうした成果を受け約1年でmRNAワクチンの量産にこぎ着けた。

 同財団は「閉ざされていたmRNAの医療への応用の道を開き、迅速なワクチン開発につながった」と評価した。

 フィールド氏は「生物生産、生態・環境」分野。気候変動の予測には特に、二酸化炭素(CO2)を吸収する植物の作用を明らかにする必要がある。フィールド氏は葉の観測を積み重ね、環境に応じた光合成の速度変化を式で表せるようにした。さらに、植物の群落を大きな1枚の仮想的な葉として扱えるよう式を発展させ、気候モデルや衛星観測、海洋研究と融合し、世界的な生物圏のCO2吸収量の分布や、大気中CO2濃度の上昇の原因を明らかにした。

 同財団は「温暖化対策の国際的枠組みであるパリ協定や気候変動に関する政府間パネル(IPCC)など、気候変動対策における科学的基礎となっている」と評価した。

 日本国際賞は独創的、飛躍的な成果で科学技術の進歩、人類の平和と繁栄に大きく貢献した科学者を顕彰するため1981年に設立。85年に初回授賞式を行った。今回は国内外約1万5500人の科学者や技術者の推薦による346件の候補から、3氏を選んだ。

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