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怖い小麦アレルギーに特定のHLAが関連 理研と島根大研究

2021.07.21

 食物アレルギーのうち、小麦製品を食べた後に運動すると呼吸困難などを起こすアレルギーがある。「小麦依存性運動誘発アナフィラキシー(WDEIA)」と呼ばれ、重篤なケースでは救命措置が必要だ。理化学研究所(理研)と島根大学の研究グループは、この怖い小麦アレルギーに「白血球の血液型」と言われるHLAのうち、特定の型が関連していることが分かったと発表した。発症リスクを予測するバイオマーカーとして活用できる可能性があるという。

 WDEIAは、うどんなどの小麦製品を食べた後に運動すると、じんましん、下痢、腹痛や呼吸困難などを起こす食物アレルギーの一つで、重篤な場合はアナフィラキシーショックを来たす。成人に見られる小麦アレルギーの大部分を占め、子供が給食でうどんなどの小麦製品を食べた後に運動し、救急搬送の例も多く報告されている。主要な原因は小麦にわずかに含まれる「オメガ-5グリアジン」というタンパク質であることが明らかになっているが、発症要因はよく分かっていない。

 理研・生命医科学研究センターファーマコゲノミクス研究チームの莚田泰誠チームリーダー、福永航也研究員、島根大学医学部の森田栄伸教授、千貫祐子准教授らの研究グループは、WDEIAの発症要因を究明するために、まずWDEIA患者77人と比較対象の日本人924人を対象に「ゲノムワイド関連解析(GWAS)」と呼ばれる遺伝子解析をした。

 その結果、WDEIA患者では、ヒトゲノムDNA上で一塩基だけ異なる「SNP(一塩基多型)」のうち「rs9277630」という特定のSNPが関連していることが分かった。

 研究グループは次に、別のWDEIA患者91人を調査対象に追加し、さらに詳しく解析した。その結果、「HLA- DPB1*02:01:02」という特定のHLAの保有率が、比較対象の日本人が39%であるの対してWDEIA患者は73%もあり、統計的に有意に高いことが判明した。

特定のHLA「HLA- DPB1*02:01:02」のWDEIA患者と一般日本人との保有率の違い(理研/島根大学提供)

 研究グループは、「HLA- DPB1*02:01:02」という特定のHLAを持っている人は、持っていない人よりもWDEIAを発症するリスクが高いことが示された、と結論付けた。発症リスクを予測するバイオマーカーとして、将来的には遺伝子検査に活用されることが期待できるとしている。

 HLAは、赤血球の型である血液型に対して白血球の型を示している。白血球以外にもHLAは存在するため、正確には「ヒト白血球抗原」と呼ばれている。免疫に関係が深く、免疫が関係する多くの疾患の発症や副作用の発現リスク因子でもあるとされる。新型コロナウイルス感染症の感染、発症にも関係するとの見方もあるが、現時点で詳しいことは不明だ。

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