アトピー性皮膚炎の患者が汗によってかゆみなどのアレルギー反応を起こすのは、健康な人の皮膚にも存在するカビが出すタンパク質(MGL_1304)が汗に溶けて皮膚から体内に入り込むことが原因であることを、広島大学大学院の秀道広(ひで みちひろ)教授らの研究グループが突き止めた。このタンパク質を効率的に吸収または不活性化する製品を作ることで、アトピー性皮膚炎の新たな治療やスキンケア方法の開発に役立つことが期待されるという。
研究グループは、アトピー性皮膚炎患者の汗の中でも、特にアレルギー反応でかゆみの元となる物質「ヒスタミン」を大量に含んだ汗を調べ、タンパク質の一部であるアミノ酸の特有な配列をつかんだ。その配列をタンパク質のデータベースで調べたところ、人間の皮膚に存在するカビの仲間、マラセチア属の真菌の一種「グロボーサ」のものと一致した。
この配列を基にタンパク質を作り、アトピー性皮膚炎患者の血液に加えると、ヒスタミンが出てきた。健康な人ではこうしたアレルギー反応が起こらなかったため、このタンパク質が汗アレルギーの原因と結論づけた。
アトピー性皮膚炎は、特徴的な皮膚の変化とかゆみを伴う、慢性化する皮膚疾患。その悪化要因にはいくつかあるが、約80%の患者は汗に対するアレルギーがあり、肘の内側やひざの裏、顔、首といった汗のたまりやすい部位に湿疹が出やすいことから、汗は特に重要視されていたが、汗の中のどの成分が原因かは分かっていなかった。
研究論文“Fungal protein MGL_1304 in sweat is an allergen for atopic dermatitis patients”は、5月31日発行の科学誌「Journal of Allergy and Clinical Immunology」のオンライン版に掲載された。