国際宇宙ステーション(ISS)で5カ月半の滞在を終えた野口聡一さん(56)ら4人の飛行士を乗せた米スペースX社の宇宙船「クルードラゴン」が日本時間2日午後、地球に無事帰還した。4人の健康状態に問題はないという。これに先立ち4月28日には星出彰彦さん(52)が日本人2人目のISS船長に就任した。
野口さんは4月24日から滞在中の星出さんと別れを惜しんだ後、米国人3人とクルードラゴンに搭乗。5月2日午前9時35分、高度約400キロにあるISSから離脱した。機体は徐々に降下して大気圏に突入。パラシュートを開いて午後3時56分、米フロリダ州パナマシティー沖に着水した。機体は回収船に引き揚げられ、野口さんらが降機した。帰還は当初4月29日の予定だったが、着水予定海域の悪天候で延期された。
野口さんは往復でクルードラゴンの本格運用1号機に搭乗。ISS滞在中はヒト由来の人工多能性幹細胞(iPS細胞)から作った肝臓の基となる組織を、血管を模した構造体と共に立体的に培養させる実験、船外活動などの高度な任務を遂行した。帰還を前にユーチューブに、ショパンの「別れの曲」をISS船内のキーボードで演奏する自身の映像を投稿した。
宇宙航空研究開発機構(JAXA)によると、野口さんは3回の飛行の通算で、ISS滞在が日本人最長の335日に到達。宇宙滞在は同最長の若田光一さん(57)より約3日短い344日となった。
星出さんは4月28日、ISSの米国実験棟「デスティニー」で船長交代式に臨んだ。前任の米国人、シャノン・ウォーカーさん(55)から「海軍の伝統の言い方でお伝えします。『アキ(星出さん)、私は指揮権を放棄します』」と言葉をかけられ、船長を象徴する鍵を受け取った。星出さんは「世界中の地上(の管制など)のチームも含め、われわれは一つのチームだ。これを素晴らしく、そして安全で楽しい任務にしましょう」と話し、約5カ月の船長の職務を開始した。
日本人の船長は2014年の若田さん以来。ISSの現場責任者として飛行士を統括し、船内の状況や活動を把握。火災などの緊急事態時には、安全確保やISSの機能維持の指揮を執る。
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2010年以来2回目の複数日本人宇宙同時滞在が実現したのを受け、野口さんと星出さんは4月26日に地球と中継を結び、そろって会見。野口さんは「日本人同士で日本語で、きぼう(日本実験棟)の中で引き継ぎができるのはうれしい。国の政策としての飛行士だけでなく、民間の方が宇宙にいらっしゃる時代になる。日本人が来るからにはお手伝いする」。星出さんは「細かな引き継ぎが母国語ででき非常にありがたい。今後、日本人がどんどん飛んで宇宙ステーションに貢献するため、新しい人材が必要になる」と話した。
関連リンク
- JAXA「野口宇宙飛行士ISS長期滞在ミッション特設サイト」
- ユーチューブ「野口宇宙飛行士の宇宙暮らし ショパン『別れの曲』」
- JAXA「星出宇宙飛行士ISS長期滞在ミッション特設サイト」
- NASA「International Space Station」(英文)