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NASA、アポロ以来の月有人着陸機開発にスペースX選定

2021.04.19

 米航空宇宙局(NASA)はアポロ計画以来の有人月面探査を目指す「アルテミス計画」で使う着陸機の開発企業として、米スペースX社を選定したと発表した。月上空と月面の間を往復する。

スペースX社が開発する有人月面着陸機の想像図(同社提供)

 計画では、4人の飛行士が乗った宇宙船「オリオン」が大型ロケット「SLS」で地球を出発し、数日かけて月上空に到着。その後、このうち2名が有人着陸機「HLS(Human Landing System)」に乗り換え月面に降りる。約1週間にわたり月面を探査してHLSで上空に戻り、オリオンで地球に帰還する。

 契約額は28億9000万ドル(約3100億円)。HLSの開発は同社のほか、通販大手アマゾン創業者のジェフ・ベゾス氏が設立したブルーオリジン社、アラバマ州に本拠を持つダイネティクス社の宇宙開発企業2社も候補となっていた。NASAが16日に公表した文書は、3社のうちスペースX社が「圧倒的な最低価格」を提示したとしている。

 NASAは現行の国際宇宙ステーション(ISS)に用いる有人宇宙船開発と運用については、実現を確実にするためスペースX社とボーイング社の2社に委託している。今回のHLSも企業の競争力を高めようと、複数社との契約に向け検討が進んだが、結局、予算の制約で1社に絞り込んだという。スペースX社はISS用の有人宇宙船「クルードラゴン」を実現した実績を持つ。

 NASA有人宇宙飛行部門の幹部、キャシー・リーダース氏は「この重要な一歩によって人類は持続的な月探査へと向かい、また火星など太陽系の遠方での活動に目を向け続けることになる」と述べた。スペースX社を率いるイーロン・マスク氏は「アルテミス計画のチームに加われて光栄だ」とツイッターに投稿した。

 米国は2030年代の有人火星探査を視野に、国際協力による月探査を計画。アポロ以来半世紀ぶりとなる有人月面着陸は当初、28年の予定だったが、19年春にトランプ政権(当時)が前倒しを決め、24年に実現するとした。月探査は日本と欧州、カナダが参画を表明済み。昨年7月には日本の文部科学省とNASAが、日本人の月面着陸機会に言及した共同宣言を発表しており、HLSが実現すれば日本人の着陸が視野に入ってくる。

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