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日本人宇宙飛行士の応募、「文系」「カナヅチ」もOKに?

2021.03.01

 今年秋ごろ13年ぶりに募集する日本人宇宙飛行士について、自然科学系の大学卒業以上としていた前回の応募条件を改め、文科系も含め分野不問で検討していることを、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が明らかにした。泳力の条件も削除する可能性があるという。実施中のパブリックコメント(意見公募)なども参考に判断する。

船外活動を行う宇宙飛行士の星出彰彦さん=2012年(JAXA、NASA提供)
船外活動を行う宇宙飛行士の星出彰彦さん=2012年(JAXA、NASA提供)

 JAXAは飛行士の応募条件や選抜方法の検討にあたり「多様な人材の雇用や働き方が社会に浸透しつつあることを考慮し、より多くの方に宇宙飛行士になる可能性を広げる」として、検討中の新条件の具体案を挙げた。

 学歴について2008年の前回に「大学(自然科学系)卒業以上」とした条件を「大学・大学院、短期大学、高等専門学校、専門学校卒業以上。分野は問わない」とする案を示した。卒業後の実務経験も、3年以上の条件は維持するものの、「自然科学系分野における研究、設計、開発、製造、運用など」とした分野の制限を、今回は撤廃する可能性があるという。

 「水着および着衣で75メートル」「10分間の立ち泳ぎ」という泳力の条件は、訓練で習得できるとして削除を検討。また、JAXAに10年以上の勤続を条件としたが、今回は任期制なども考えている。

 募集や選抜、訓練に関するパブリックコメントは所定の書式でメールによって受け付けており、締め切りは3月19日。企業のノウハウやアイデアを活用するための情報提供依頼(RFI)も同時に行っている。

 JAXAによると、米露が通常の飛行士募集で文科系を含めた例はなく、実現すれば世界初になるとみられる。有人宇宙技術部門事業推進部の川崎一義部長は「(文科系を含むかどうか)現段階では決めきれていない。競争率が上がるので反対意見もあるだろう。皆さんの意見を分析した結果を踏まえ、何らかの答を出したい」と述べている。

 米国は2020年代に国際協力で月上空に周回基地を建設し、24年にアポロ計画以来となる月面着陸を実現する計画。日本も2019年に参画を決定しており、着陸も視野に、将来にわたり有人宇宙開発を継続的に支える飛行士が必要となっている。今後は5年に1回程度、募集するという。

 JAXAの飛行士募集は6回目で、2008年には963人の応募者から航空自衛隊パイロットだった油井亀美也(ゆい・きみや)さん(51)、全日空パイロットだった大西卓哉さん(45)、海上自衛隊医官だった金井宣茂(のりしげ)さん(44)が選ばれた。JAXAの現役飛行士は44~57歳の7人がいる。

初めて日本人宇宙飛行士に選ばれた(左から)毛利衛さん、向井千秋さん、土井隆雄さん(1992年撮影)=左写真。前回選ばれた金井宣茂さん、油井亀美也さん、大西卓哉さん(2011年撮影)=右写真(いずれもJAXA提供)
初めて日本人宇宙飛行士に選ばれた(左から)毛利衛さん、向井千秋さん、土井隆雄さん(1992年撮影)=左写真。前回選ばれた金井宣茂さん、油井亀美也さん、大西卓哉さん(2011年撮影)=右写真(いずれもJAXA提供)
若田光一JAXA特別参与(JAXA提供)
若田光一JAXA特別参与(JAXA提供)

 日本人初の国際宇宙ステーション(ISS)船長を経験し、5回目の飛行も予定するJAXAの若田光一特別参与の話:私も各国の飛行士と仕事をしてきたが、理系出身ばかり。操縦や実験など、自然科学系の知識を必要とすることが多いので、バックグラウンドとしては当然かと思う。ただ例えば、航空機の操縦士には文科系出身の方も多い。門戸を広げ、飛行士として必要な資質を選抜時にきちんとみることも考えられる。選抜の仕方をきちんと工夫することがとても重要だ。

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