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地球史上2回目の大量絶滅、大噴火が原因と結論 東北大

2021.03.10

 地球史上2回目の生物大量絶滅が、大規模火山の噴火で起きたことを突き止めた、と東北大学などの研究グループが発表した。動植物が陸に進出した古生代「後期デボン紀」の約3億8000万~3億6000万年前に起きたもので、高温でできる有機分子を決め手とする独自の手法を用いた。同グループは昨秋、3回目の原因も大噴火だったことを同じ手法で示しており、火山が生き物の命運を握る地球の歩みがより鮮明になった。

後期デボン紀に起きた大量絶滅の仕組み(海保邦夫・東北大学名誉教授提供)
後期デボン紀に起きた大量絶滅の仕組み(海保邦夫・東北大学名誉教授提供)

 後期デボン紀の地層には水銀が多く含まれており、大噴火が大量絶滅の原因であるとの見方が強まっていた。ただ、水銀は噴火以外に陸上植物に由来する可能性もあるため、決め手を欠いていた。

 そこで東北大学の海保邦夫名誉教授(地球環境史)らの研究グループはこの時代に海で堆積した地層の岩石を、2005~15年ごろにかけフランスとベルキー、中国で採取。分析の結果、水銀に加え炭化水素の「コロネン」が多く含まれていることを突き止めた。

 コロネンは1個のベンゼン環を6個のベンゼン環が囲んだ、独特の形状を持つ芳香族炭化水素。有機物の燃焼でできる際、森林火災を上回る1200度以上の高温を必要とする。具体的には高温のマグマか、天体の衝突によるものであることが海保名誉教授らの研究で分かっている。まとまった量のコロネンは大量絶滅が起きた年代の地層でしか見つかっていない。

 この時代の地層からは天体衝突でみられる元素のイリジウムが見つからず、同じ時代のクレーターも存在しない。一方、当時は東ヨーロッパとシベリアに大規模な火山があったことが知られている。海保名誉教授らはコロネンを手掛かりにした独自の手法で、大量絶滅の原因は大噴火以外にあり得ないと結論づけた。

 大規模火山の噴火は、地球深部の高温物質が上昇する「プルーム」によって起こった。マグマが石油や石炭、植物由来の土壌をコロネンに変えたほか、水銀も発生。これらが大気中に飛び散り、世界中に広がったと考えられる。噴火で拡散した二酸化硫黄や二酸化炭素などが引き金となって気候が変動し、大量絶滅が起きたという。

 この後期デボン紀の大量絶滅を細かくみると、約2000万年間に順に小、大、中規模の3回に分けられる。噴火が大規模だと絶滅の規模も大きかった。この間、海ではあごがない魚や、鎧兜(よろいかぶと)をまとったような姿の甲冑(かっちゅう)魚といった古代魚が絶滅し、現代型の魚類の繁栄に道を開いた。水際では両生類が誕生し、陸にはシダ植物の森林ができた。

 大量絶滅は史上5回起こったとされる。海保名誉教授らは生物が陸に本格進出する前、約4億4500万~4億4300万年前の古生代オルドビス紀末に起きた1回目について、大噴火が原因だったことを2017年に示した。昨年11月には最大規模だった約2億5000万年前、古生代ペルム紀末の3回目も大噴火で起きたことを、やはりコロネンを手がかりに発表している。なお恐竜が絶滅した中生代白亜紀末、6600万年前の5回目は天体衝突が原因で、この時代の地層からもコロネンが見つかっているという。

 海保名誉教授は「4回目(約2億年前、中生代三畳紀末)の原因も大噴火であることが有力視されており、私たちが裏付けの研究を進めている」と述べている。研究グループは東北大学など国内と米国、ベルギー、中国の研究者で構成。成果は地球科学の国際誌「グローバル・アンド・プラネタリー・チェンジ」の電子版に2月20日付で掲載され、東北大学が22日に発表した。

後期デボン紀の地球の姿。オレンジ色が大陸、水色が大陸棚、白が深海、赤はプレート同士の衝突帯、黄色い三角が大規模火山(海保名誉教授提供。古地理図はヨアヒムスキ氏ほか=2009年、アース・アンド・プラネタリー・サイエンス・レターズ誌=による)
後期デボン紀の地球の姿。オレンジ色が大陸、水色が大陸棚、白が深海、赤はプレート同士の衝突帯、黄色い三角が大規模火山(海保名誉教授提供。古地理図はヨアヒムスキ氏ほか=2009年、アース・アンド・プラネタリー・サイエンス・レターズ誌=による)

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