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「ナイスステップな研究者2020」に多彩な10人

2020.12.21

 文部科学省科学技術・学術政策研究所(NISTEP、ナイステップ)は、科学技術イノベーションのさまざまな分野で活躍した研究者10人を「ナイスステップな研究者2020」に選定した。現代社会の課題に密接に関わる研究など多岐にわたる分野で、国内外に広く成果を還元している人物を選んだという。

「ナイスステップな研究者2020」に選ばれた田中大輔氏が研究する「金属-有機構造体(MOF)」の模式図(関西学院大学提供)
「ナイスステップな研究者2020」に選ばれた田中大輔氏が研究する「金属-有機構造体(MOF)」の模式図(関西学院大学提供)

 活躍が期待される30~40代の研究者で、平均は41.3歳。人工知能(AI)技術やデータサイエンスを駆使した医療、材料科学、化学などへの応用研究、自然科学と人文社会科学の融合研究、認知症の新たな診断法や、国連の持続可能な開発目標(SDGs)に資する技術開発といった分野から選ばれている。

 NISTEPの調査研究活動を通じて得た情報や、専門家約2000人への調査などにより、最近の活躍が注目される約540人の候補を抽出。研究実績に加え、新興・融合領域を含めた最先端・画期的な研究内容、産学連携・イノベーション、国際的な研究活動の展開などの観点から、NISTEPの所内審査を経て10人が決まった。

 ナイスステップな研究者は2005年に開始。過去に選ばれた人物には、後にノーベル賞を受賞した山中伸弥氏や天野浩氏がいる。

          ◇

 選定された研究者と研究内容は次の通り。敬称略。年齢と所属は公表の15日現在。

 市橋伯一(42)東京大学大学院総合文化研究科先進科学研究機構・同大生物普遍性研究機構教授「世界で初めて試験管内で分子進化を再構成する実験系モデルを開発し、生命の起源と進化の謎に迫る」

 沖部奈緒子(46)九州大学大学院工学研究院地球資源システム工学部門資源処理・環境修復工学研究室准教授「微生物の力を活用した金属製錬法の開発 バイオハイドロメタラジーによる金属資源開発技術でサステイナブルな社会創生を目指す」

 恐神貴行(45)日本アイ・ビー・エム株式会社東京基礎研究所シニア・テクニカル・スタッフ・メンバー「生物の脳を再現した機械学習の新技術開発 確率的な環境における意思決定技術に関する、科学への貢献から産業応用まで」

 桂ゆかり(40)物質・材料研究機構統合型材料開発・情報基盤部門主任研究員、東京大学大学院新領域創成科学研究科特任助教、理化学研究所革新知能統合研究センター客員研究員「論文から過去の実験データを集めることで大規模材料物性データベースStarrydataを構築 材料科学にデータ科学を取り入れたマテリアルズ・インフォマティクスに貢献」

 鎌田雄一郎(35)米カリフォルニア大学バークレー校准教授、NTTリサーチサイエンティスト「ゲーム理論の理論研究と制度設計への応用研究 待機児童の解消など社会課題の解決に効果的なマーケットデザインの開発」

 佐野幸恵(42)筑波大学システム情報系助教「『物理』の視点で複雑な『社会』を研究する:SNSにおける情報拡散パターンの解析」

 武田朱公(43)大阪大学大学院医学系研究科臨床遺伝子治療学寄附講座准教授、大阪府立病院機構大阪精神医療センターこころの科学リサーチセンター認知症ユニットリーダー「世界初『目の動き』を利用した簡便、正確かつストレスのない認知機能検査法の開発 認知症の早期診断へ」

 田中大輔(40)関西学院大学理工学部化学科准教授、科学技術振興機構さきがけ研究者「AI技術による革新的な材料探索の実現 無機物・有機物両方の特性を持つエネルギー貯蔵・変換材料を目指して」

 藤井啓祐(37)大阪大学大学院基礎工学研究科システム創成専攻電子光科学領域教授、同大先導的学際研究機構量子情報・量子生命研究センター副センター長、理研創発物性科学研究センターチームリーダー、株式会社QunaSys最高技術顧問「万能量子コンピュータ実現を目指した、量子ソフトウェアの研究開発で量子情報科学分野を先導」

 山本陽一朗(43)理研革新知能統合研究センター(AIP)目的指向基礎技術研究グループ病理情報学チームリーダー「がん画像から、新たな知識を自力で発見する医療AI技術を開発 がん再発予測の画期的進化」

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